サクサクのカツとハイボールのキャッチボール

「とんかつを食べられるくらい稼げば、人生は可もなく不可もない」と言ったのは誰だったか。とんかつがあれば人生が豊かになるのは間違いありません。

立ち飲みに揚げ物はつきものだけど、どうせならおいしい揚げたてのアツアツが食べたいと思っていました。

▲今日はこちらへ。

今回の目的は、サラリーマンの街・新橋で、立ち飲みをしながら、揚げ物を食べること。なんという甘美な響きなんでしょうか。聖地巡礼にも似た、高尚な行いのような気がしてきました。

駅前には、かの有名なニュー新橋ビルがありますが、今回訪れる店は、烏森口とは逆、新橋駅直結のビル１階にあります。

『立ち呑みとんかつまるや 新橋２号店』は、おいしいとんかつを食べさせてくれる、サラリーマンから絶大な支持を受ける人気店です。こちらを含めて、周辺に何店舗かあるのですが、一番雰囲気のいいコチラに今日はお邪魔しました。

▲豊富なメニューとテレビがいいですね

店内をぐるっと見回すと、大きなハイボールの看板が目に入りました。揚げ物とハイボールという組み合わせの妙は、誰もが知るところですが、ハイボールのいいところはカロリーが低く、プリン体含有量も少ないこと。飲めば飲むほどやせるという噂も囁かれています。

▲そんなわけで、メガジョッキで乾杯

くう〜。口開けのハイボールはうまい！　「ビールは最初の一口が一番うまい」という人がいますが、どんな気持ちで彼らは二口目を飲むんでしょう。

私はいつだって新鮮な気持ちで、お酒を飲んでいますから、一口目がうまかったら、二口目も間違いなくおいしいし、一口目がおいしいなんて無粋なことは口にしない。

例えば、自分の奥さんに「昔はかわいかったね」なんて言ったら血を見るのは明らかなわけで「今日も変わらず、かわいいね」って言っておけば、世界がうまく回るんです。酒も同じで、いつだって「うまいうまい」って言ってれば、何杯飲んだってフレッシュな気持ちで楽しめるんだ。

▲揚げ物が届くまでの箸休め

注文した揚げ物が届くまで、しばし酒場と揚げ物の関係について思いをはせます。大衆酒場に揚げ物がつきものなのは「安い」と「おいしい」という、二つの要素をパーフェクトに満たすからでしょう。

では、なぜ揚げ物はうまいのか。それは、外の衣のサクっとした食感と音が、脳内から幸せホルモンを出すからじゃないかって思うんです。人間の好きな要素が一口目に詰まっている。それが揚げ物なんでしょう。

▲ロースカツが届きました

そうこうしているうちに、素晴らしい見た目のカツが届きました。揚げたてだから、カラッとしているのがわかります。さすがカツの専門店。流行色の茶色のモノトーンコーデと、レモンとからしの黄色の差し色が目を引きます。君はもうビジュアル系だね。

▲それがこうなった

皆さんは、きっと塩で食べるんだろうな、と予測したに違いない。しょぼい酒飲みの私だって、塩で食べるカツが、酒に合うことはよく知っています。

だけど、この日はソースをたっぷりかけたい気分だったんです。塩がえらい、ソースが野暮、なんて議論をここでするつもりはありません。見苦しくないこと、欲張らないこと、その二つを心の片隅においておけば、どんな食べ方をしてもいいと思うんです。

だから私は迷うことなくソースをかけました。そしてひと口。うん、うまい。こいつとハイボールは最高のバッテリーになりました。

絶品のカツが一球投げるたび、ハイボールが「シュワ」といい音を立ててキャッチする。その繰り返しで酒が止まらなくなります。

はあ、幸せだ。