タイでは異色だった『2gether』での恋愛模様

――登場人物たちがビデオ通話を利用して、お互いの顔を見ながら会話をするシーンがありましたが、あれもタイでは普通のことなのでしょうか?

清水 その質問が出ること自体、在タイ歴の長い私からすると驚きです(笑)。なぜなら、タイ人はいつでもどこでもビデオ通話をしているからです。ドラマのように若い子たちだけの間で行われていることではなく、どの性別でも、どの世代でも一般的に行われていることです。日本のように電車の中では通話禁止という規則のないタイでは、電車に乗ってもビデオ通話をしている人たちをよく見かけます。

――日本におけるSNSでの“匂わせ”も印象的でした。

清水 サラワットがタインの画像をSNSにアップして「彼には口説かれている人がいます」や「サラワットにはタインという恋人がいます」と書いたりしていましたね。恋人になる前でも相手の画像を自分のSNSにアップして、意味深な言葉を書くのは定番中の定番です。

ただ、問題となりがちなのは、タイでは異性・同性同士の恋愛問わず、複数人と恋人として恋愛を同時進行させる人が多いことです。そうなると、自分の匂わせ投稿と同じ相手が、知り合いの匂わせ投稿にも載っている! どういうこと!? という痴話げんかの原因となるのもありがちです。

先ほど、複数人と恋人として恋愛を同時進行させる人が多いのがタイの恋愛事情の特徴と言いましたが、要するに「恋愛至上主義」の人が多いのがタイの特徴です。男女問わず、好きになった相手には、自分の気持ちをストレートに伝える人が多く、日本人にとっては気恥ずかしくなるようなロマンチックな言葉を、どんどん相手に伝えるがとても上手。

「甘いことばかり言っていると、アリに口を嚙まれちゃうわよ」という決まり文句があるほど、タイ人のトークは甘いんです。

『2gether』でも、タインのことを大好きで追いかけていたグリーンは若干極端ではありますが、自分の気持ちをいろいろな言動を通して伝えようとしていた、マンのようなタイプを想像してもらうとわかりやすいと思います。このようなタイプが一般的なタイ人だとすると、サラワットは、その“一般的”からは少しずれていると言えるかもしれません。

▲『2gether』第1話より ©ジッティレイン/奥嶋ひろまさ

サラワットは、ずっと前からタインを好きだったのに、その気持ちを伝えていなかったですよね。さらに、タインから「彼氏のふりをして欲しい」と言われたときにも、自分の気持ちを隠したまま、むしろ冷たくあしらっていました。

タイでは一般的ではないツンデレ男子と、世界各国どこにでもいそうな、ちょっと鈍感で相手の思いをなかなか理解できない男の子。その2人の掛け合いが、一般的なタイの押せ押せモードの恋愛とは全く違い、見ている人たちの胸をキュンキュンさせたのかもしれません。