美味しいスイーツの甘酸っぱい思い出

あれは、201X年の、3月18日。そう、わたくしの誕生日であった。(果たして何名の方がこの数字にピンときてくださっただろうか)母は、わたくしのためにケーキを準備して、わたくしの勉強が終わるのを待っていてくれた。

とそこへ、母の携帯電話の着信音がけたたましく鳴った。その電話はいわゆる彼女のママ友からで、子どもが学生のうちはママ友というのは連絡を密にしなければならぬもので(かくいうわたくしはまだママになったことはない)少々話し込んでいた。

今なら待つことが出来る。なんなら、洗い物でもして余裕綽々だろう。しかし、当時のコヌマアヤネという少女には余裕が無さすぎた。なかなか終わらない電話に立腹し、せっかくの誕生日を泣き喚いて過ごした。ほんとうにいいご身分だ。自分のことだが…。

あんな誕生日は二度と過ごしたくないし、ひょいと記憶が脳裏を掠めただけで苦虫を噛み潰す思いだ。事細かに綴ったけど。なにより母に申し訳ない気持ちでいっぱいだし、彼女のママ友(電話の後で阿鼻叫喚となっていた事は想像もしないだろう)にもこっそり心のなかでお詫び申し上げたい。

そして、予め忠告をしておくが、わたくしの母はこの連載にこれからも登場する可能性が高い。でも母、として登場するのであって突然知らない女性の名前が出てきて話が進んでいる、なんてことはないので安心して頂きたい。

これからの連載で徐々に明らかになるであろう紆余曲折を経て、弊社は、何があった日でも、母の買ってきてくれる美味しいスイーツを美味しく頂き「美味しかった!」と笑顔で告げることを可能にした。夕食の準備をして「美味しかった!」という言葉を貰えるようにもなった。それもこれも自己受容のおかげだ。

ちなみに、最近ではいちごのタルトを買ってきてもらった。実は、201X年の誕生日に買ってもらっていたケーキも、フルーツのタルトであった。すきなものは変わっていないが、タルトに向き合うわたくしの心はいくばくか広くなった上、美味しさを大事な人と共有できるようにもなった。あの時のフルーツタルトもわたくしの成長を喜んでいるに違いない。

大好きないちごのタルト

フルーツ繋がりで、この連載の打ち合わせの帰りに、マネージャーMさんと、最近有名らしいフルーツサンドのお店に寄った。持ち帰りありがたく頬張ったが豆乳クリームに豆乳入パン、そしてなによりゴロゴロと入ったフルーツ(わたくしは先日のいちごのタルトに続き、ここでもいちごをチョイス)未知の美味しさに震撼した。

マネージャーMさんと、LINEで美味しさを称えあった。筆無精ならぬ、撮り不精ながら、いちごのタルトを写真に収めさせてもらったので、皆さまにも目で味わって頂こう。めちゃくちゃに写真映えそうなフルーツサンドはさすがの撮り不精、写真に収め損ねてしまった。

しかし、好評だった献立の写真は掲載させてもらう。メニューは、右下から反時計回りに、ヤンニョムチキン、キャラメリゼ風焼きバナナ、生ハムのユッケ(黄身が崩壊した)キャロットグラッセ、韓国風スープだ。この日は韓国色が強めである。ヤンニョムチキンは、今流行りの、鶏肉をコチュジャンなどで味付けしたものだ。

好評だった献立はヤンニョムチキン、キャラメリゼ風焼きバナナ、生ハムのユッケ、キャロットグラッセ、韓国風スープ

食事の準備は、基本冒頭で登場したLINELIVEという配信アプリで配信をしつつまったりと進めている。作りおきなんかも準備したりする。自分で食べて、安くて美味しいのはもちろん、誰かに自分の作ったものを喜んで貰えたらそれだけで、洗い物の面倒くささも煮沸消毒の手間も、やりがいを感じてしまうので不思議だ。最近は、1時間の配信の中で作れる品数も増えてきたと感じている。

果たして自分がどこまでのモノを書くことができるのか、自分で自分を試してみたかったので(編集者さん、マネージャーMさんには、小沼の自由にしてほしいと言ってもらっている)お話を頂いてから数日間、追い込みで書き上げてしまった。読み返すと、わたくしはあるテーマからあるテーマへ数珠繋ぎ式に書きたいことが出てくるのでとんでもなく目まぐるしいと感じてしまう方もいらっしゃるかもしれない。

しかし、これが小沼の頭の中の常、であり、自然、であり、届けたい文である。紛れもなく。某誕生日のくだりなんかは、悩みながら綴ったが、わたくしが、その頃のわたくしを、認めるようにあなたも、あの時のあなたを認めてあげられたらいいなという思いで仲間入りしている。

そしてこれはオマケだが、この連載を読んでもらうことで、わたくしもやりがい、ないしは幸せを被ろうと目論んでいる。連載を頂いて、さらに幸せだなんて、おこがましいとどこぞの誰かからお咎めを食らうかもしれないので(もし仮にそんな人が存在したら)ここだけの秘密にして貰えると助かる。

読む前と比べてあたたかいもので包まれた、とまでいかなくても、肩の荷がほんの少し軽くなった、ちょっと幸せだと感じて頂けていたら、なによりわたくしが幸せだ。そしてこれから、読者の皆さん、そして、編集者さん、何卒宜しくお願い致します。


プロフィール
 
小沼 綺音(こぬま あやね)
2000年3月18日生まれ。東京都出身。「小学生に間違えられる」という見た目とは裏腹にクールで大人びた視点を持つ。リアクションや言葉のチョイスが面白く、番組で共演する芸人からの評価も高い。『青春高校3年C組』では軽音部に所属し、キーボードを担当していた。Twitter(@ayane_karona_ru)