空箱職人として大切にしていること

――それにしても、どの作品も独創的ですよね……。いったいどんな過程を経て、このような作品を完成させていらっしゃるのでしょうか?

はるきる そうですね。お菓子の商品のパッケージが持っている、もともとのデザインや雰囲気、世界観は特に大事にしています。そして、できる限りその雰囲気を作品に生かすようにしていますね。これが一番のコンセプトかもしれません。

たとえば、キャラクターなど明確なイメージがあるものは、それを活かすだけなのでデザインするときに簡単なんです。でも、そういったものがない場合は、自分で「こういう作品なら何が伝わるかな?」と自分で構想しなければいけない。そういうところでは、なかなか苦労しています。

――ギャラリーページに掲載されている作品は、どれも溜息が出る完成度ですが、もっとも苦労した作品を教えてください。

はるきる 大変さでいうと「鬼ころしの鬼」でしたね。「鬼ころし」は言うまでもなくお酒。つまり、飲み物がはいっているパッケージなので、完璧に水をはじくんです! だから、いつも使っている接着剤では取れてしまうので、さらに接着力の強い接着剤を使ったり、接着部にカッターで傷をつけることで、どうにかクリアしました……。

――鬼のクオリティがすさまじい作品ですよね……。

はるきる 建物や乗り物など、人工物は紙でも作りやすいんです。でも、人はやっぱり難易度が高くて……。今回、難しい素材で人の形を作ったということで、やはり鬼ころしは苦労しましたね。

▲「鬼ころしの鬼」 ※未成年者の飲酒は法律で禁じられています。

「夏休みの自由研究」にピッタリの作品は?

――もうすぐ夏休み。子どもたちの自由研究にもピッタリな空箱工作ですが「これから作るといいよ」というおすすめの作品はありますか?

はるきる まずは簡単な「アポロで作るロケット」はいかがでしょう? あと「明治ザ・チョコレートの小さな家」もおすすめですよ。明治ザ・チョコレートは、パッケージのバリエーションが豊か。アレンジもしやすいので、自分だけの作品を作るのに、ちょうどいいんですよ。

▲「明治ザ・チョコレートの小さな家」

どちらも30分ほどあれば作れるのではないでしょうか? 人によってはパーツの切り出しに時間がかかることもありますが、組み立て自体は10分もかからずできると思いますよ。お子さんと作る場合、切り出しだけ先に親御さんが作業しておくとスムーズかもしれません。

――たしかに。時間にあわせて、かつ難易度も考えつつ「自由研究」に取り組めますね!

はるきる そうですね。小学生のお子さんからの反響は多いんです。ちなみに、ご年配の方から「老後の楽しみに良かった」というお便りをいただいたことも。幅広く、いろいろな方、たくさんの方に楽しんでいただけたらと思っています。

僕の作品を楽しんでくださっている、すべての方に「作品集」としてお届けできたらと思っていますし、もちろん手順も載っていますから、工作の好きな方にも。今お話ししたように、夏休みの自由研究や、ステイホームの日にお子さんと遊ぶのにもいいですし、教材のようなかたちで使っていただいても――。少し先ですが、年明けにはそごう美術館での展覧会もありますので、ぜひ、実際に作品を見てもらえたらうれしいです!

[インフォメーション]
空箱職人はるきる Miracle Package Art 展

場所:そごう美術館(横浜)
日程:2022年5月27日(金) ~ 7月3日(日)
※詳細は決定次第、そごう美術館ホームページ(https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/)でご案内いたします。

その独特な「はるきるワールド」作品の発想・構想について話を振った際には「皆さんが納得してくださる作品をデザインするよう心がけているんです」「わかる人だけという芸術家ならではの世界観も素敵ですが、僕の場合は、誰が見ても楽しめる作品を生み出したいと思っています」と答えてくれた。

まさに神業を持った空箱職人としてのみならず、生粋のエンターティナーとして活動を展開するはるきるさんから、ますます目が離せません!

『お菓子の箱だけで作る すごい空箱工作』には、見るだけで楽しいのみならず、今すぐ作れる6つのオリジナル作品(もちろん全プロセスカット・型紙つき)も収録され、夏休みの自由研究にうってつけ。作品によっては30分ほどで完成するものもあるので「自由研究……時間がない!」と焦る親御さんの、力強い味方になること、間違いなし!

※本記事は、WANI BOOKOUT <https://www.wanibookout.com/>[特集]話題本ピックアップ (2021年7月16日)「お菓子の箱だけで作る すごい空箱工作​」を、加筆編集したものです。 


プロフィール
 
はるきる
空箱職人。神戸芸術工科大学アート・クラフト学科卒業。1997年生まれ。子どもの頃から工作が好きで、NHK教育テレビで放送されていた『つくってあそぼ』のワクワクさんに憧れていた。2017 年、「明治ザ・チョコレート」の箱でロボットを作ったのをきっかけに空箱工作を始め、作品をTwitter で発信。そのクオリティーの高さが毎回話題となり、テレビでも多数取り上げられている。現在は新作を制作しながら、企業とのコラボレーションも行なっている。Twitter(空箱職人 はるきる)、YouTube(空箱職人はるきる HARUKIRU)