一人ひとりの声が世の中を変えていく力になる

#MeToo運動や#KuTooが示しているのは何か。世の中には、目に見えない女性に対する圧力がまだまだたくさんあるということだ。これまで男女の雇用の機会を平等にしたり、昇進や給与体系を同一にしたりしてきたが、それらは制度を是正したにすぎない。

社会にはそれらとは別に、目に見えない性差が存在する。性暴力の問題、衣服の問題などがそれだ。これらは可視化されにくいことなので、なかなか男性のほうも問題に気づきにくく、ともすれば「昔からの習慣」「礼儀」という言葉で流されてしまいがちだ。だからこそ、それに抗う声を上げていく必要がある。

これから、若い人たちが取り組まなければならないのは、まさにこの部分。つまり、目に見えない問題を言葉にすることで表に出し、改善していくことだ。

#MeToo運動や#KuToo運動がそうだったように、一時代前に比べれば、今はSNSという武器があり、自らの声を発しやすくなっている。一人ひとりの声は小さいかもしれないが、その1つが大きな共鳴を生んで広がり、世の中を変えていく力となる。

2014年、最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんという女性を知っているだろうか。パキスタンで生まれ育ち、武装組織に「女性は学校へ行くな」と言われたことに抵抗し、頭を銃で撃たれながらも、女性の権利を命がけで訴えつづけた人だ。彼女はスピーチでこんな言葉を残している。

世界中が沈黙しているなら、1つの声でも力強いものになるのです

▲ホワイトハウスでオバマ大統領一家と会談するマララ・ユスフザイさん 出典:ウィキメディア・コモンズ

大人たちは、性差があるなかで生きてきたので、そこに対して疑問を抱いていなかったり、目の前の生活に精一杯だったりして、積極的に変化を起こそうとしない。今のままのほうが楽だと考え、沈黙する。

でも、それじゃ、社会が変わることはない。社会の理屈に縛られない、若い世代が世の中の矛盾を感じ取り、NOを突きつけ、変化を求めていくことが重要だ。

若者たちには、それを成し遂げるための言葉を持っている。言葉は社会を変えるための大きな武器だ。その武器を活かして、いつ、何を変えるのか。それは一人ひとりの思い1つにかかっているのだ。

※本記事は、石井光太:著『格差と分断の社会地図 16歳からの〈日本のリアル〉』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。