香港はこれからウイグルと同じ道を歩むのか?

全人代常務委員会副委員長の王晨は、今回の香港選挙制度の「改正」により「愛国者による香港統治」を徹底できる、と説明しています。そして、その「愛国者による香港統治」が「一国二制度、香港人による香港統治、高度の自治方針の長く安定的な維持につながる」とも謳っていました。

2020年の立法会選挙は、2021年9月に延期されましたが、選挙委員会の選出を先に行うことが決まったので、新たな選挙委員を選出する12月以降に再延期される可能性が高そうです。この流れのままいけば、2022年の行政長官選挙でも、中国により忠実な人材が選ばれるかたちになります。

今回の全人代の決定のあと、林鄭月娥長官は「政治体制は中央政府の管轄であり、選挙制度はその重要な構成部分である」として「全人代の決定は完全に合法であり合憲である」と歓迎の意を示しました。

一方、香港民主党(民主派の最大政党)の羅健煕(ロー・キン・ヘイ)主席は「北京の決定によって立法会の代表性はさらに失われ、民意の支持もさらに失われた」とイギリスの公共放送BBCでコメントし、こう懸念を表明しています。

多くの香港市民は体制に失望し、ますます議会が自分と無関係だと思い、(これまで選挙行動やデモで表明していた民意が強権で押し込められることで)恨みの不満はむしろ蓄積して、いつか大爆発が起きるのではないか

この全人代決定は、事実上、香港立法会の人代化(人民代表化)です。そして、今後起こり得るのが、香港の新疆(しんきょう)ウイグル自治区化です。中共の指導に異なる意見をもち、自らのアイデンティティや文化を守ろうとする人間を「国家政権転覆者」として裁き、弾圧し、香港人全体を恐怖政治と洗脳教育で、習近平を核心とする共産党中央に素直に服従して抵抗しない「愛国者」に育て上げようとするわけです。

おそらく中国からの移民も増やし、香港アイデンティティの淡化も進めることでしょう。今、ウイグル人にしていることと同じようなことを。

▲香港はこれからどのような道を歩むのか? イメージ:PIXTA