世界中の人々を苦しめる新型コロナは、習近平政権の隠蔽によって拡大した! ニュースやSNSなどで飛び交う、中国のラボからの漏洩説や生物兵器説など、実際のところを中国ウォッチャーの第一人者・福島香織氏に聞いた。
※本記事は、福島香織:著『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです
解放軍は新型コロナウイルスの軍事利用を想定していた
中国は2020年3月に入って、新型コロナウイルス問題で中国責任論を展開する米国の「世論戦」への対抗策をエスカレートさせていきました。
それまでは、なんとなく「新型コロナウイルスは中国の外から持ち込まれた可能性がある」とぼんやりした言い方で、鐘南山のような感染症の専門家に発言させてきたのですが、3月12日の夜、中国外交部の趙立堅報道官がツイッター上で「新型コロナウイルスを米軍が武漢に持ち込んだ」と“陰謀論”を展開しました。
外交部報道官という政府官僚が、公式の記者会見場ではないにしろ、米国を名指しして、新型コロナウイルスの責任を問い始めたのです。
この発言には少し複雑な背景があります。2019年10月中旬、武漢で米軍チームも参加する軍事オリンピック(ミリタリーワールドゲームズ:国際ミリタリースポーツ評議会主催/2019年10月18日~27日)が開催されました。
このとき米軍人5人が原因不明の感染症に罹り、隔離措置を受けたことは地元紙・長江日報(11月7日付け)が報じています。
趙立堅のツイート発言は、こうした記事が憶測を呼び、ネット上で「新型コロナウイルスは、この軍事オリンピックの際に、米軍が持ち込んだウイルス兵器だ」という“陰謀論的噂”が広がっていたことが背景にあります。
西側社会のネット上では、同じ新型コロナウイルスの陰謀論でも、解放軍の生物兵器説が流れているのですが、中国やロシアのネットでは米軍兵器説が流れています。
ちなみに解放軍内で、新型コロナウイルスを取り扱った研究が行われていることは周知の事実でした。
軍事オリンピックに先立ち、9月18日に武漢の天河国際空港で、軍事オリンピック参加の外国軍の荷物から、新型コロナウイルスが漏洩したという仮定で、人民解放軍の生物化学防護部隊が防疫対策訓練を行っています。
つまり「新型コロナウイルス」は軍事的に利用されうる、という想定が解放軍内の認識としてありました。
実は2003年春にSARSが中国でアウトブレイクを起こしたときも「SARSウイルスは米軍の生物兵器だ」といった噂が流れました。そのせいなのか知りませんが、以降、解放軍ではかなり真剣にコロナウイルスに関する研究がされており「医学争鳴」などの解放軍系医学論文雑誌などで発表もされています。
なので「中国の武漢で突然発生した新型コロナウイルスは、人為的につくられた生物兵器ではないか。生物兵器ではないとしても、研究室から漏れたものではないか」という疑いを、専門家も含めて多くの人が持っていました。
西側社会で、この“ウイルス人為説”を疑う人は、もっぱら中国のラボからの漏洩を想定していると思います。