夜の街へのハードルを低くする要因

飯島愛さんの親は真面目な会社員と主婦であり、夜の街とは縁が薄かった。じゃあ、なぜ彼女はその道に進んだのだろう。

理由を一言で表せば、自暴自棄になったことで「危機管理力」を失ったことだ。

夜の街に足を踏み入れれば、犯罪や健康被害のリスクが高まり、白い目で見られることもある。このリスクと引き替えに、高い収入を得られる可能性をつかんでいるともいえる。多くの人がそこで働きたがらない理由は、リスクを恐れるからだ。

自分が傷つきたくないので、なるべく危険な状況に身を置くのは回避しようと思う。家族や友人が大事なので、彼らを悲しませるようなことはやめようと思う。

つまり、自分自身を守りたい、まわりの人を裏切りたくないといった気持ちが、その人の危機管理能力となって、リスクの高い世界から距離をつくるのだ。

一方、飯島愛さんは違った。

子ども時代から親にわかってもらえなかった、という思いから自暴自棄になっていた。自分の人生なんてどうでもいいし、家族の思いなんて知ったことじゃない。そんな気持ちが危機管理能力を失わせ、夜の街へと走らせた。

これまでのことをまとめれば、夜の街へのレールは次のような方程式にあるといえるだろう。

劣悪な家庭環境⇒ハードルが下がる体験、危機管理能力の欠如⇒夜の街

こうして見てみると、社会には夜の街にいたる道筋があることがわかるんじゃないだろうか。

▲社会には「夜の街」にいたる道筋がある イメージ:PIXTA

※本記事は、石井光太:著『格差と分断の社会地図 16歳からの〈日本のリアル〉』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。