肉屋の揚げ物のうまそうな匂いの正体

大人になると、鼻が利くようになります。私は酒飲みですから、おいしそうな店は、なんとなくですが入った瞬間にわかります。

店全体が、かもし出す匂いをかいだ瞬間に「ああ、この店はきっといい店んだろう」と思うんですね。そして大抵、その予想はあたる。いい店ってのはいい匂いがするもんなんです。

▲近所の肉屋さんからもいい匂いがします

私が考える“おいしそうな匂い”の一等賞はそうだな、やっぱり肉屋ですかね。

ほら、店の前を通ると、ぷーんと揚げ物の匂いがするじゃないですか。あれがたまらない。肉屋の店主が忙しそうに揚げ物をする、その様子を子どもの手を引いたお母さんがじっと見ている。きっと今晩の食卓に並ぶんだろうなって思いを馳せながら、私もふらふらと肉屋に吸い込まれてしまうんです。

▲コレなんだかわかりますか?

肉屋の揚げ物の香りって、気持ちをそわそわさせませんか。私は前を通るだけで酒が飲みたくなる。なぜかと考えたら、揚げ物に使われている“ラードの香り”が大好きなんだと気がついてしまった。ドルチェ&ガッバーナよりも、ラードの香りが愛しく思えた私は肉屋に向かいました。

ということで、今回の主役はラードです。

▲さっそく鍋に移します

「ラードください」

「はいよ!」

店主が一斗缶から大胆に注いで袋に詰めてくれたので、それを持ち帰ります。白く濁っているのですが、これを加熱すると茶色く、よく見る“あの油”に変身します。今回は高さのある鍋に入れて揚げ物に挑戦します。

▲ハンバーグダネを…

まずは、肉屋でラードのついでに買ってきたハンバーグのタネを揚げちゃいますね。こちらにパン粉をわさわさとつけたら完成。

卵や小麦粉なんてつけずに、パン粉をいきなりつけるのがポイント。ハンバーグ自体に油があるから、パン粉は意外としっかりとつきます。

▲黄金に輝く揚げ油にイン!

それをね、鍋にドボンと入れました。パチパチ。いい音がしてきたけど、ラードって意外と跳ねるんですね。ガスレンジに軽く飛び散った油を見て、このあとの片付けを思い、一瞬憂鬱になりかけました。

でも、うまいつまみが食べられるんなら、それに勝る幸せはありませんよね。元気がいいラードのほうがおいしいに違いない! いいぞ、いいぞ! どんどん飛び散れ。飛び出せ青春ならぬ、飛び出せラードだ。