「ひとりSDGs」「舌先のダイソン」などの古舘語録も次々と飛び出した、TBSラジオの『水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論』での古舘伊知郎と山里亮太(南海キャンディーズ)のトーク合戦。山里が「こんな文字数を浴びたことがない」と表現するほど、古舘が喋りっぱなしで、古舘の代名詞でもある“古舘節”の原点や“MC論”についても語られた。

車窓からの景色が古舘の実況スキルを育んだ

「さぁ、山ちゃんの入場であります。白いTシャツに、そしてロングガウンを羽織っているかのような深いネイビーブルーで入ってまいりました。相変わらずのメルクマール。赤いフレームが映えております。この山ちゃんの良さをいえば、枚挙にいとまがありません。まず言えることは短いフレーズで的確に、カミソリのように、そして、その昔に伝説と言われたカマイタチのように斬り込んでくるというあたりでしょうか。斬り込んでから、すぐスッと持ち上げて、そして真綿で首を絞めるが如くジワジワと締め込んでおいてから、パッと離して緊張と緩和。またいい気持にさせてくれて、おだて上げるという、その辺が百戦錬磨の技であります」

山里のことをプロレス実況風に例えて欲しい、というリスナーの要望に即興でスラスラと応じた古舘。よどみなく炸裂した古舘節に山里が聞き惚れていても、当の本人は「見た目をいい尽くす訓練だけは45年やっていますからね」と気どらない様子。

この実況のスキルは、昔から車の外に見える景色を実況してきたからこそとのこと。今は「さぁ、腹筋を使ってベッドから起き上がろうとしていますが~」と、日常の何気ないシーンを心の中で呟くようにしているそうで、それが実況の衰えない理由なのだそうだ。

MCはいろいろな方向から物事を見ることが大事

MCに一番必要なことは? というリスナ―の質問に対して、古舘は「いつもいろんな角度から、防犯カメラのようなモノを作動させることですね」と回答。例えばラジオであれば、ゲストだけでなく、放送作家や周りのスタッフのことにも目を配っていないとダメだという。目の前のことだけに集中するのではなく、いろいろなことを俯瞰的に見ることがMCにとっては重要なのだ。

また、著書『MC論 - 昭和レジェンドから令和新世代まで「仕切り屋」の本懐 -』でも触れている、“マスターオブセレモニー(MC)”と“司会”についても、最近のMCはグループになっていて、司会役とボケ役と進行役のような分業制がひな形で、ひとりでやる司会者がいないと語った。

テレビ黎明期は、司会者・進行役・ボケ役・ツッコミ役をこなして全方位を見るのを、男性の司会者が1人でやっていることが多かったという。それが時代とともに段々と変わってきたそうだ。

そのうえで、古舘は「山ちゃんは司会者になりたいという願望があるじゃないですか。ひとりで全部こなせるよね。かならずモードは繰り返すじゃない。でも、まったく同じものは流行しないんだよね。ちょっと時代の波に洗われてアレンジされて。山ちゃんは今後、いまどきの司会者になっていくんだと思うよ」と山里に語りかけた。

なお、山里については著書『MC論』でも、古舘ならではの分析がしたためられている。