海の幸たっぷりの磯らーめんに舌鼓

人口約22万人を擁する青森県八戸市。今回の「萎えぽよエリア」のなかでは静岡県浜松市の次に大きな街である。ところが人口動態を見ると、ここ10年でおよそ10%も減っており、さらに青森県全体では28市町村もの自治体が国から「過疎地域」に認定されるなど、決して未来を楽観視してはいられない状況だ。EXITはそんな地域をどうぶちアゲてくれるのか――今回も期待が高まる。

東北新幹線で東京から八戸へ北上。駅に降りたら、いつもは観光案内所に飛び込んで地元の人にオススメスポットを尋ねるところなのだが、今回は1つ、どうしても食べたいものがあった。それは「磯らーめん」。

母が東北の人なので、子どもの頃に釜石で1度食べたことがあるのだが、この「磯らーめん」、これまでの人生で出会ったラーメンの中でも、かなり上位にランキングされるくらいおいしかった記憶がある。

あれをもう一度食べたい。観光案内所の方にそう告げると、彼は「それなら『八食センター』がいいですよ」とおすすめしてくれた。「八食センター」とは、八戸の「食のテーマパーク」とも言える市場で、今ではすっかりおなじみのB級グルメコンテスト『B-1グランプリ』、2006年の第1回大会はここで開催されたそう。八戸がB-1発祥の地とは知らなかった(ちなみに、そのときの優勝は静岡の富士宮やきそば。八戸名物のせんべい汁は2012年大会でようやく優勝している)。

▲地域活性化を目的とする「まちおこし」の代表的イベント『B-1グランプリ』は八戸発祥

八戸駅からバスに揺られて10分ほどで八食センターに到着。入ったのは『勢登鮨』さん。ここは鮨店ではあるものの、メニューはかなり多岐にわたっていて、ハンバーグや生姜焼きなど肉系の定食も充実。八戸名物の「せんべい汁」や「いちご煮」などの郷土料理も、フードコート感覚で気軽に楽しめる店だ。私はもちろん磯らーめん(この店では“海鮮らーめん”という名称)を注文した。

▲青森、岩手の沿岸部の名物麺「磯らーめん」。丼を彩る多様な海の幸がゴージャス

大きめのどんぶりに入った磯らーめんは、塩味のスープに魚介の出汁が溶け込んで、とても味わい深い逸品。具も、エビ・ホタテ・イカ・ホッキ貝・ムール貝・海藻と盛りだくさんで、オプションで追加した焼きウニのオレンジが目にも鮮やかだ。

磯らーめんは、店によって入っている具もさまざまで味も異なるらしいのだが、ここのは昔の記憶に近い味で、とてもおいしかった。東京でも食べられたらいいのにな、と一瞬思ったが、いやいや、それはやっぱり旅の情緒とともに本場でいただくのが最高なのだろう。

朗読会も盛ん! 八戸市は「本のまち」だった

食後、市場のほうに出てみる。週末ということもあり、地元の人たちも買い物を楽しんでいた。コロナで長らくどこもかしこも静かだったので、市場らしい賑わいを見ると心躍る。サバ、イカ、ニンニク、長芋、リンゴ推しの売り場が青森ならでは。魚のバリエーション以上に驚いたのは「リンゴジュース」の種類の多さだ。さすがは産地である。

▲八食センターの市場は地元の人にもよく利用されているとのこと
▲リンゴの名産地だけに、リンゴジュース専門の店があるのが驚き

八食センターからは、市の中心部に向かうバスに乗り、以前から訪問してみたかった『八戸ブックセンター』を目指した。

12月でオープンから丸5年を迎えるここは、八戸市が経営する書店として、たびたび注目されてきた。自治体の書店経営は珍しいことなのだが、前市長が選挙の際に「本のまち八戸」を掲げ、当選した際には書店を作ることを公約、本好きを増やし、八戸を文化の拠点とする目的で作られたそうだ。

所長の音喜多信嗣さんに話を聞くと、もともと八戸では本の朗読会が盛んで、いくつかの市民団体があり、なかには50年以上も続くグループもあるとのこと。本が人々の生活に根ざしていること、それが「本のまち八戸」という市のキャッチフレーズの由来となっている。

▲八戸ブックセンター。こだわりのドリンクを楽しみながら店内で本が読める

館内の書架はジャンルごとに選書されており、そのラインナップにもキュレーションのセンスが光る。飲み物を提供するカウンターやギャラリースペースがあったりと、洗練された空間はとにかく居心地が良い。訪れた人は飲み物を片手に、店内の椅子に座ってゆっくり読書を楽しむことができるのだ。

「本に親しんでもらえるよう、とにかく訪れてみたくなるような施設を目指しています」と音喜多さん。

カウンターには、萎えぽよエリアぶちアゲ活性化ツアーのチラシとともに、EXITが表紙の『Hanako』が置いてあった。

「もうすぐ兼近さんの小説が出ますね」(取材をしたのは10月17日で、発売日は10月27日)と言うと、そのことはご存知なかったようだが、今頃はもう置いてあるだろうか。売れているといいなと思う。

▲イベントのフライヤーとともにEXITが表紙の『Hanako』が飾られていた

束の間の読書タイムを楽しむため、コーヒーを買って施設の片隅で読もうとすると、スタッフさんが素敵な場所を教えてくれた。そこは三方を本棚に囲まれた小さなブース。中央に1人掛けのソファがあり、そこに座るとたくさんの本の中で、本の匂いに包まれながら本が読める。秘密基地のようなしつらいに本好きの血がたぎる。梅原猛の『少年の夢』を手に取り、ほんの少しの間ではあったが、夢のような時間を過ごした。

▲三方を本棚に囲まれたブース内部からの眺め。見渡す限りの本、本、本