「お酒飲みの品格」を持てばチャンスは広がります

ただ、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって「お酒との向き合い方」も大きな変化を迫られました。

緊急事態宣言下、まん延防止等重点措置下の地域では、飲食店などに対して休業・時短営業や酒類提供停止の要請が出され、大半の店が休業やお酒の提供なしの営業で乗りきろうと奮闘しました。

私も飲食店経営者のひとりとして、国や自治体が行っている、飲食店だけを標的にしていると思えるような感染対策には、いろいろ申し上げたいこともあります。このルールに対して不満もあります。

とはいえ、それでもルールはルール。ですから、『クラブ由美』も東京都の要請に従ってルールを守り、その範囲内でなんとか営業を続けてきました。

またコロナ禍で、お酒を飲む側の行動に批判が集まるケースも目立っています。

例えば、飲む場所がないから道端で、公園で、コンビニの前で宴会を開くという、屋外での「路上飲み」。これには屋外でも新型コロナウイルスの感染リスクがあるだけでなく、深夜まで大騒ぎしたり、ゴミを放置するなどの社会人としてのマナーの欠如も指摘されています。

▲ニュースでも問題となった「路上飲み」 イメージ:SUKEN / PIXTA

また宣言が解除になったときも、複数人で押しかけて大騒ぎしながら飲食する、勝手にお酒を持ち込んで飲む、人数をごまかすといった、お酒を飲む客側のマナーの悪さが頻繁にメディアで取り沙汰されました。

そんな話を聞くにつけ、そうした酒品の欠如した行為に「だから『お酒が悪者』という印象になってしまうんだ」と苦々しく思ったものです。

飲食店の方々も、みな同じ気持ちなのではないでしょうか。

私は思うのです。お酒に関してこれほどまでに制約が多いご時勢に、お酒とどう付き合うのか、どう向き合うのか――その立ち居振る舞いにこそ、その人の「酒品」が見えてくるのだろうと。

『クラブ由美』には、感染対策の時短要請・酒類提供停止要請のなか、限られた営業時間内におひとりで何度も足を運んでくださり「お店に迷惑をかけられないから1杯だけ」とか「お茶だけでも」と長居されることもなくすぐに帰られる。そんな清廉な「お酒飲みの品格」を携えたお客さまが大勢いらっしゃいます。

この自粛期間中、そうしたお客さま方にどれだけ勇気をいただけたことか。本当にありがたいと思っています。

パーッと飲みに行きたいけれど、感染対策の自粛ルールでそれができないのなら、不満はあってもそこはグッとガマン。こうした状況下だからこそ、社会のルールを守り、マナーも守りながら、安全のことも考え、制約があるなりにお酒を楽しむ。

そうした自制心を持った行動ができることもまた、「酒品のある飲み方」なのではないでしょうか。

このコロナ禍の状況、考えようによっては自身のお酒との向き合い方、自身の酒品を今一度見つめ直すいい機会なのかもしれません。

酒は人なり。酒席における品性は、その人の本当の姿です。

理性を失わず、周囲を明るく照らし、自らも愉しむ。そんな「酒品」があれば、仕事も人生も大きく飛躍を遂げるチャンスに恵まれます。

▲お酒との付き合いを見直す機会かもしれない イメージ:PIXTA