2023年にワールドカップを開催するフランスが優勝した「オータムネーションズシリーズ」。日本でもおなじみの名将エディー・ジョーンズが率いるイングランドはどうだっただろうか? 2021年のエディー監督の動きを総括してみよう。

とにかくハードワークでチームを進化させ続ける

2021年のシックスネーションズ〔毎年、2月から3月にかけて、アイルランド・イタリア・イングランド・ウェールズ・スコットランド・フランスの6カ国の代表で行われる対抗戦〕を、2勝3敗の5位という大失態とも言える戦績で終えたイングランド。とにかく辛辣な現地のメディアは、さまざまな角度から監督解任論を展開し、エディー・ジョーンズ監督を徹底的に追い込んだ。

また今年は、4年に一度、アイルランド・イングランド・ウェールズ・スコットランドの選抜オールスターチーム、ブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズが結成され、夏の代表戦の季節に南半球に遠征を行う年。

こうした背景から、ライオンズ参加国は今年の夏の代表戦には若手中心のチームで挑んだ。イングランドも例外なく多くの若手を起用し、アメリカを43-29、カナダを70-14で順当に下した。だが、明らかに格下であるこの2カ国を若手中心のチームで下しても、世間のジョーンズ監督を見る厳しい目は変わらない。南半球の強豪国を迎える秋の代表戦でいい結果を出さない限り、ラグビー大国イングランドのファンたちは満足しない。

「新しいイングランド。新しいスタイル。この秋は、新しいチームで戦います」

秋の代表戦を前にした会見でのジョーンズ監督の言葉だ。事実、この秋はマコ(PR)、ビリー(NO8)のブニポラ兄弟、ジョージ・フォード(SO)をはじめとし、これまでチームの主力として重用されていた選手たちが数多く代表から外れた。特筆すべきは、この秋に外された選手たちの多くはまだ20代で、2年後のワールドカップを十分に戦える世代。

新しいチームで秋の代表戦を戦ったイングランドは、トンガを69-3、オーストラリアを32-15、そして2019年ワールドカップ決勝で敗れた南アフリカを27-26で下し、3連勝で秋の代表戦を終えた。

主将のオーウェン・ファレル(SO・CTB)が初戦のトンガ戦をコロナ偽陽性、南アフリカ戦を負傷で欠場するという不運に見舞われたが、新チームにこだわったジョーンズ監督の期待に応えた選手たちは、ファンたちを納得させるパフォーマンスを見せた。

「この選手たちは新しいイングランドの歴史を作っていく選手たちです。南アフリカ戦は僅差の厳しい戦いでしたが、とにかく踏ん張り、何度でも逆転してやるという気概を見せてくれました。ですが、このチームはまだまだこれから。2年後のワールドカップに向けて、もっと進化を続けていかなければなりません。来年のシックスネーションズでは、更にレベルの高いラグビーをプレーする為に、まだまだハードワークを続けていかなければなりません」

結果を残した選手たちを称えつつも、いつものようにハードワークの大切さを強調するジョーンズ監督。

「今年に入ってから、23人の選手が代表デビューを果たしましたが、新しくチームに入ってきた選手たちには、とにかくハングリー精神を見せて欲しいです。最大の目標はワールドカップですが、一番大事なのは次の試合。現在、私は来年のシックスネーションズ初戦、スコットランド戦に勝つことだけを考えているのですから、選手たちもこの試合に出場し、そして勝つことだけを考えているべきです」

▲ハードワークの大切さを強調するジョーンズ監督 撮影:Taka Wu

山あり、谷ありの2021年だったイングランドだが、チームを率いる名将の姿勢はいつも同じ。ハードワークを重ね、目の前の敵を倒す為に全力で準備に励む。イングランドの2022年シックスーネーションズは、2月5日、スコットランドのマレーフィールドで幕を開ける。