泣き出した赤ちゃんにも優しいEXITの二人

会場の『小浜市文化会館』に入ったのは14時過ぎのことで、ご当地のゆるキャラ「さばトラななちゃん」が観客をお出迎えしていた。ちなみに、ポケットに入っているのは名物の鯖。ゆるキャラはイマイチかわいくないのが多いけど(失礼)、ななちゃんは思わず抱きつきたくなるような可愛らしさで、たくさんの人が写真を撮っていた。

▲さばトラ猫のななちゃん。コロナ禍のご時世につきマスク姿

今回のコラボグッズは『濱の湯』のタオルのみだったが、来場者には福井県らしく「若狭塗の箸」がプレゼントされた。色は数種類あったようで、いずれもEXITのロゴが入っていた。

▲小浜市とのコラボタオルは『濱の湯』の入浴券付き

たくさんの人で賑わうロビー。お客さんの中には小さな赤ちゃんを連れたお母さんも。ほとんど新生児みたいな小ささだったので聞いてみればその通り、生後一ヶ月だという。彼女は「(小浜公演が)予定通りに行なわれてたらまだお腹の中だったんですけど、延期になったので来られました」と笑顔で話していた。

▲生後1ヶ月。人生初ライブがEXITというラッキーな赤ちゃん

開演時間の16時。ライブは『なぁ人類』でスタートだ。二人の歌に合わせて手拍子が起こり、会場が一体感で包まれる。場内の雰囲気があったまったところで漫才のために再登場すると、兼近はセンターに置かれた漫才用のサンパチマイクが、どこにもつながっていないのを指摘して笑いを誘っていた(音声は各々ピンマイクで拾っているのでサンパチは飾りで置いてある)。

▲しばらく『PEN PEN PEN』がオープニング・ナンバーだったが、この日は青森公演ぶりに『なぁ人類』でスタート
▲どこにもつながってないサンパチマイクをイジる兼近

 漫才は『雪』『高齢化社会』『戦国男子』の3本。

『雪』の途中では赤ちゃんが泣き始め、焦った親御さんが外に連れ出そうとしたのだが、それを見てすかさず二人は「パパ、大丈夫ですよ。泣かしときましょう」「ね、泣いてたっていいでしょ」と優しく声をかける。赤ちゃんの泣き声ひとつで崩れるようなヤワな芸じゃないもんね。もちろん本人たちはそんなことは言わないけれど、これまでいろんな現場で培ってきた経験と技量があればこその対応だなと感じた。

客席後方から登場したEXITに大興奮!

『戦国男子』は、この前日に行なった「ルミネtheよしもと」でもかけていたネタで、2019年のパシフィコ横浜では兼近がワイヤーで吊るされ、特効をバシバシ使った異次元な演出で盛り上がったことも思い出す。内容はあれからもちろんアップデイトされており、初出の時よりもボケの数が増えていた。

▲ 漫才「戦国男子」で彼女の“おつう”にLINE電話をかける“りんのすけ”

恒例『方言男子』のコーナーは、りんたろー。が「『マーメイドテラス貸切』って夕刊マンのゆのせパイセンに言えばいいげ」。東京から来た私にはちんぷんかんぷんだが、あとで聞いたら「マーメイドテラス」は海岸沿いにある夕日の名所で、「ゆのせパイセン」は、福井のローカルタレント、ゆのせ徹朗さんのこと。以前、夜のニュースに「夕刊マン」として出演していたので、福井県民に親しまれているそうだ。

続く告白パートは「ひって好きやよ~」。一方の兼近は「鉛筆ぼんぼ~ん!!(=鉛筆の先が丸くなっていること)」「好きやで。付き合ってくれんかー」。両方ともびっくりするほどシーンとしており、空調の音が聞こえるかと思うほどの静寂ぶり。りんたろー。も「過去最高のスベリよ」と苦笑いするほどだった。

▲ツアー最終日前日にして過去最高のスベりを記録した『方言男子』。コーナー全体がこのあとのトークのフリになっていたので、結果として大成功!

そして、この日の企画コーナーは『ノーハンドダンボール』。ステージ上に置かれた大小さまざまなダンボール箱を、手を使わずに脇元マネージャーの身長の高さ(190センチ)まで積み上げる、というもの。

制限時間は3分。二人が協力してミッションをクリアしようと奮闘する姿が見ものだ。シンプルなルールの簡単なゲームだけど、二人とも真っ向から挑んで、全力でやるところが最高。

▲器用にダンボールを操る兼近だが、残念ながらミッション達成ならず
▲足で箱を挟む作戦だったが、意味のないただの倒立になってしまう

最後の歌『SUPER STAR』で、二人はまたしても客席後方から登場し、観客と至近距離で交流。特に子どもたちが大喜びする様子には胸が熱くなった。この子たちはきっと「人生で初めて見た芸能人はEXIT」と言って、大人になってからも今日のことを懐かしく思い出すんだろうな。

EXITのライブは、単にパッケージ化されたショーを「鑑賞している」という感じにはならず、演者である二人が観客に近づき、寄り添ってくれるのが特徴的だ。観客は観客でそれを受け、二人の存在を身近に感じて素直なリアクションをする――要するに「双方向性」があるのが最高。これまで10公演に帯同して来たけれど、どこの会場でもこんなハッピーな交歓の様子を見ることができた。

EXITのライブを見てきて、改めてすごいと思うのは、会場や客層によって“もてなし”の仕方を変えていることだ。観客がライブの一体感をより感じられるよう、さまざまな演出が考えられ、それが回を重ねるごとにアップデイトされている。

これはりんたろー。と兼近の考えでもあるのだろうが、チーム全体にそういう気風が行き渡っているからなんだと思う。公演場所は毎回違うから「パッケージショー」と捉えるなら毎回同じでも良さそうなものなのに、決して“ルーティーン”にはならないところにEXITの高いプロ意識を感じる。

一度そのことを彼らに話したら「自分たちが飽きちゃうんで」と、二人ともこともなげに言っていたことにシビれた。知れば知るほど「推し甲斐がある」と思わせてくれるコンビ、それがEXITなのだ。

▲思いがけず近くに来た兼近に喜んで手を振る子どもたち
※今回の取材は感染対策を徹底したうえで行いました。

▲あなたの街にチャラ男を呼びませんかSP