初対面は会話が弾み、突然の共通点は運命を感じる

あらすじすっ飛ばし勢のみなさま、もう目隠しを外してよろしくってよ。

まず、一般的な推理小説には無い、真の人間を描いた作品に、わたくしは感銘を受けた。いやしかし、改めて読み返してもなかなか恐ろしい。この人間的恐怖をリアルに表現した様が、わたくしの中で第一次入院のあの夜を彷彿とさせる。そして井原氏が、自分自身を恐ろしく思う気持ち、めちゃめちゃわかるわぁ〜! という観点で、選出させていただいた。

齋藤氏となぜか打ち解けた井原氏。コヌマ氏ともわかり合えそうだ、別の意味で。彼と不安の共有などして、慰めあいたい。とはいえ、『二癈人』をお手に取ったことがないという方も多いだろう。わたくしの拙いあらすじだけでは伝わらない(韻を踏んでしまった)、臨場感が堪らないので、まだという方はぜひ。今ならなんと、もれなくコヌマと感想を語ることができる特典付き! 

こうして、わたくしが誰かから教えていただいた本を、今度はご紹介する立場になるという輪が、いや、「幸せ沼」が、どろりと辺り一面を覆っていくのだ。めでたし。

『二癈人』の細かい話になるが、井原氏は初対面にもかかわらず、斎藤氏へ自身の闇に葬られし昔話を披露してしまう。これは、先程あらすじで述べたように伏線として後に回収される。そして、実際に全くのお初にお目にかかる人と、なぜか会話が弾んで意気投合する。あとになって、何かしらの共通点を見つけてしまう、みたいなことって、実際にあるのだ。

まあ、わたくしたちは運命だの偶然だのが好きであるので、いちいちそういった“しっぽ”をつけようとすると言われれば、そうかもしれない。楽しけりゃいい。だって、コヌマも最近あったんだもの。ちょうど院間期に。

明くる日に入院することが決まった前夜祭のこと。1度入院すると、髪の毛のメンテナンスにしばらく行けないので、駆け込みで美容院の予約を入れた。その直後、配信で顔を見せたので「お、コヌマ、美容院行ったな?」とお気づきの方もいらしたのでは無いだろうか。いや、気づいて貰っていたらわたくしはうれしい。

▲美容院帰りのコヌマ

初めて訪れる美容院で、当然、施術してくださる美容師さんは初対面。もちろん、シャンプーの担当者さんも初対面であった。その方はSさんと言った。Sさんは、若くていわゆるイマドキな風貌の男性で、髪はもちろん服装もオシャレだった。実はコヌマ、みなさまが思っているほどに極度の人見知りではなく、初対面の方とも選り好みせず話せるのだ。

しかし、Sさんは、なんだかとりわけ親しみやすかった。彼は、テキパキと洗髪をこなしながら、とめどなく楽しい会話を提供してくれた。美容院たる職業の人の腕は、どうしてこうも口と同時に動かせるものかと、いつも感心させられる。鍛錬の成果だろう。話をしているうちに、Sさんとわたくしはなんと、同い年であることが発覚した。まさかである。

下はゼロ歳から、上は100056歳くらいまであるうちの、歳が一緒というのは、大層なことではないか。わたくしはいささか感動した。シャンプーの気持ちよさも3割増であった。

▲撮影 : 天寺創一 素敵なお写真をありがとうございました!

そういえば院間期では、うれしい「はじめまして」が多かった。みなさまご存知、ミスiDのイベントで、画面越しのファンの方々との「はじめまして」しかり、素敵なお写真を作ってくださったカメラマンさん、ヘアメイクさんとの「はじめまして」しかり。

ミスiDのイベントは久しぶりのリアルにもかかわらず、実はあまり緊張していなかった。楽しみが勝っていたのもあるし、準備に追われていたのもある。しっかり支度をした甲斐があり、みなさまとの「はじめまして」にも、「久しぶり」にも万全の体制で挑むことができた。多少のトラブルはあったのだが、ぜひ忘れていて欲しい。

▲ミスiDのイベントに出演した際のひとコマ

母と過ごした「はじめまして」の経験

個人的なイベントで大きなものがひとつ、母と映画を見たというのがある。『きのう何食べた?』という作品で、終了間際であったため、見る前から見てよかったと感動していた。見たあとからもやはり感動していた。

なにより、母と同じ時を映画館で過ごし、同じ感動(彼女には彼女の思うところがもちろんあるに決まっているが、似た柔らかい空気だったという意味で)に包まれた。22年間の母娘の物語で「はじめまして」の経験だったかもしれないと思う。お互いに成長した。

こんな幸せそうな文章を、今度は窓際になった病室のベッドでしたためている。「幸せ沼」と「闘病生活」は対極にあるようで、実はつながっているのかもしれない。「闘病生活」の先に更なる「幸せ沼」が待っている気もするし。映画の帰りに「はじめまして。ひとめぼれです」と購入した、便利な折りたたみ式コップを毎日使っている。

▲愛用の折りたたみ式コップ

今回のニュースクランチもまた、病気という重たいテーマをユーモラスに綴った素敵なものになった。我ながら。今だから書ける旬なものは、書いておいて損は無いはず。読んでくださって非常に光栄だ。そして、前途多難な「幸せ沼」の連載を支えてくださっているみなさん(そういえば両親もか?)にも、重ねてお礼を申し上げたい。療養に励むぞ!


プロフィール
 
小沼 綺音(こぬま あやね)
2000年3月18日生まれ。東京都出身。「小学生に間違えられる」という見た目とは裏腹にクールで大人びた視点を持つ。リアクションや言葉のチョイスが面白く、番組で共演する芸人からの評価も高い。『青春高校3年C組』では軽音部に所属し、キーボードを担当していた。Twitter(@ayane_karona_ru)