味噌とレバーは至高のマッチング

ブタのニラレバ炒めがあるのだから、イノシシのニラレバ炒めも美味だろうとつくったが、これはもうブタのレバーよりも遥かに、イノシシのレバーのニラレバ炒めのほうが美味で、それを丼に盛った温かい飯の上にぶっかけて「イノシシのニラレバ炒め丼」をつくって喰ったところ、そのおいしさに我が輩は腰を抜かし、舌は躍り、頰っぺたは落ちた。

▲イノシシのニラレバ炒めは絶品 イメージ:Nutria / PIXTA

血抜きしたイノシシのレバー(200グラム)を小口切りにし、それを熱湯で茹でながら灰汁(あく)をどんどん取り去り、ザルにあけて水気を切り、それに塩を振っただけの「イノシシレバーの塩茹で」は、イノシシのレバーの真味(しんみ)を知るには絶好の食べ方である。これを食べると、レバーからジュルジュルとうま汁が流れ出てきて、それを塩味が上手に囃(はや)すものだから、ビールのあてにとても似合っていた。

「イノシシレバーの味噌煮込み」は、血抜きなど下処理をしたレバーを、熱したフライパンで千切りにしたニンニクと、ショウガ、鷹の爪と共に炒め、それに塩とコショウをする。そこに赤味噌、赤ワイン、味醂、醬油を加えて味をみながらざっと炒め、全体をタレのとろみで絡ませたものである。 

この料理の出来上りは赤みを帯びた飴色で、全体が光沢していて美しい。味噌を使うことによりレバーの臭みが抑えられ、さらに全体の味が和らいでくる。レバーの表面に光沢が出たのは味醂を使ったからで、総じて日本酒の辛口の燗酒に実によく合った。

▲味噌とレバーは至高のマッチング イメージ:shige hattori / PIXTA

味噌を使うといえば、本格的な「イノシシのレバーの味噌炒め」は、郡司さんらの得意技である。下処理をしたレバー(600グラム)はひと口大に切って衣(卵の白身一個分)と片栗粉(大サジ1)を絡め、揚げ油を140℃に熱してさっと揚げる。

中華鍋に油(大サジ2)を熱しニンニク(2かけ)を中火で炒め、香りが出たら強火にしてレバーをさっと炒め、合わせ調味料(味噌大サジ2、砂糖大サジ1、醬油大サジ1、酒大サジ1を合わせたもの)を加え、手早く味を絡め、片栗粉(小サジ1)の水溶きを加えてとろみをつけ終了。

この味噌炒めもとても美しい赤色素の飴色となり、食べると味噌のうまじょっぱみとレバーの濃厚なうま味とが口の中で融合し、クセになりそうな味に引き込まれる。ビールのあてにもよいが、芋焼酎のロックなどにも合う肴だ。

※本記事は、小泉武夫:著『肝を喰う』(東京堂出版:刊)より一部を抜粋編集したものです。