コーチの役割とは失敗を成長に変えること

私は日本代表のヘッドコーチとして、企業チームやクラブチームのそれとは異なり、4年のスパンで物事を考えました。各チームのコーチが1年ごとに結果を求められるのとは異なります。

そういう意味ではワールドカップの負けも、世界最終予選の負けも、最終目標に直結しないところがあったのかもしれません。だからポジティブになれたのでは? と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、本来の私は負けることが大嫌いです。負けていいとは一度も思ったことがありません。やるからには勝つ。すべて勝つ。だからワールドカップも、世界最終予選も、負けた試合のあとは決して気分がよくありませんでした。もしかしたら周りの人たちには近寄りがたいオーラを出していたかもしれません。

ただ冷静にゲームを振り返ったときに「なるほど、これが足りなかったから負けたのか」と理解でき、ならば「次はその足りないところを練習しよう」と前向きになれるのです。

気分を悪くしたままの勢いで選手たちを叱責したら、それこそ選手たちはヘッドダウンをして、最終目標に向けて、チームにヒビが入ってしまいます。車輪にヒビの入った馬車は、いつ脱輪・転倒するかわかりません。それでは大切な選手たちを、目的地である東京2020オリンピックでの金メダルに向けて運ぶことはできません。

コーチ=導く人は、たとえ落ち込むことがあっても、それを引きずってはいけません。常に前を向き、落ち込んだ原因から学ぶことで、次の失敗を防ぎます。そうすることで目的地まで大切なものを運ぶ、自分の役割、すなわち結果が残せるのです。

▲失敗を成長に変えるのがコーチの役割 イメージ:Fast&Slow / PIXTA