最も簡単で意識的にできる『共感』という方法論
例えば、漫才を見ていて「なんでやねん!」とツッコミが入った瞬間、みんなが一斉にドッカンと笑います。そもそも、どうして「なんでやねん!」をキッカケに、ドッカンとみんなが一斉に笑うのか?
答えを言ってしまうと、これは“共感”という働きかけです。相手が思うことを、相手が思うよりも一瞬早く差し込んであげるだけで、相手の感情にはプラスの変化が現れます。これ、意識してやろうと思えばやれますよね。
共感というのは、最も簡単に、かつ意識的にできる、相手の感情にプラスの変化を与える方法論のひとつです。だから、漫才師は登場すると「寒いですねぇ」とか言うわけです。誰もがそう思うからです。それで爆笑する人はいませんが、上向きのベクトルが加わります。
意識していなくても、ニュースや天気の話題とかをしているはずです。「こんなニュースあったよね」って。
なぜか? 相手もそう思うからです。それで爆笑する人はいませんが、相手の感情にちょっと上向きの矢印が浮力のようにかかると思ってください。
想像してみてください。例えば、夏休みが始まる前に、先生が「宿題これだけです」と言った瞬間、立ち上がって「先生、めっちゃ多いやん!」と言うのがクラスの人気者でした。これを聞くと、みんなドッと笑ったと思います。でも、冷静に考えて「めっちゃ多いやん!」、これが面白いことかと言うとそんなことはありませんね。みんなが思うことを代弁しているだけです。
少し条件を変えて、先生が「宿題これだけです」と言ったあと、みんなでワイワイ「宿題多いよな」「宿題なんかなかったらええのにね」「遊ばれへんやんな」と散々しゃべったあと、さぁ帰ろうかという段になって、ひとり振り返って「先生、めっちゃ多いやん!」、これはタイミングを逃しています。
相手が思うことを、相手が思うよりも一瞬早く差し込んであげるのです。これにさまざまな条件が重なると大きな感情の変化につながる。だから、みんなの感情が一斉に動かされて、一斉に笑うという行動につながるんです。
これ、お笑いでいうところの“ツッコミ”の基本の理屈です。だから、誰かがツッコんだ瞬間にちょっとスベった感があるときは、みんなが思うことを代弁できていない。つまり、少しズレているか、みんなが思うより一瞬早く言えていないか、基本どちらかです。
仕事でお客さんにツッコミを入れて笑いをとってください、という話ではありません。何かを説明する際、一方的に説明するのではなく、この年代の、こんな立場の、こんな趣味の、こんな人なら、こういう話をしたらどう思うだろうか、ということに思いを馳せて、想像力を巡らせることがまず第一歩です。
普段からコミュニケーションをとっている人なら類推したり、初めて会うような人なら勉強したりして「あぁ、こんな話をすると、○○さんのような立場なら、こう考えてしまいますよねぇ。でも、弊社的にはこうなんですよ……」とやるだけで、コミュニケーションは間違いなく円滑になるということです。説得力が出るし、こちらが思うように動いてもらいやすくなる。
このように使っていただければ、絶対に成果はついてきます。「彼は若いけど、わかってくれてるよな」とか「彼と話していると元気でるな」とか「彼の話は理解しやすいよな」なんて思われながら仕事をする人と、相手に「彼が来るとちょっとしんどいんだよね」なんて思われながら仕事をする人とでは違って当然です。
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