信頼関係を全面に打ち出した料金システムに驚いた!
料金はどうしようか悩んでいると、「このカゴに入れるんだよ」と常連さんが教えてくれました。テーブルに置かれたカゴにお客が代金を入れるシステム。もちろんおつりも自分で受け取る。
おそらくはオペレーションの手間を減らすための工夫なんだけど、信頼関係を全面に打ち出したシステムがいいですよね。こうなると、お客も信頼に応えなくていけないという気持ちになる。おいしいつまみと酒を安価で提供してくれる店の心意気にこたえてこその酒飲みです。
たとえば、場末の飲み屋で生牡蠣というメニューを見つけたとして、それを頼むのは、ロシアンルーレットにチャレンジするようなヒリヒリ感があります。実際にあたったこともある。
だけど、こちらのお店は、刺身が与えてくれた安心感を片手に、迷うことなく注文することができる。いいお店は牡蠣の注文に悩まないんです。そもそも立ち飲みで生牡蠣を置いてるところも少ないけど。プリプリの牡蠣は、あっという間に胃の中に消えていきました。
おいしいつまみに舌鼓をポンポンと打ちながら酒を重ねていると、どんどんお客さんが入ってくる。ドリンクを手にすると、みんなが自然と「お疲れさまです」と声をかけて乾杯が始まる。ああ、いい光景だ。
こういう交流を久しく経験していなかったことを思い出して、なんだか涙が出そうになってしまった。一昔前は、こんな風景がどこの街にもあったんだ。けど、気がついたら笑顔で酒を飲むことが疎んじられるようになっていた。酒が悪いわけじゃない。だけど、気がついたら酒飲みは肩身が狭くなっていた。ふざけんなって話だ。
店員のお姉さんがね。おすすめがあるんで食べてほしいというから、私は迷うことなく注文します。この連載も長いことやってきたけど、私は2つのルールを守ってきた。安くていい店では長居しない。店員のおすすめは断らない。この2つを守るだけで、店から大事にしてもらえるし、こっちもそれなりの品位を保とうと思う。どうでしょう。
アニメのお肉をモチーフにした、ローストビーフ、これが本当にうまかった。やわらかくしっとりと調理された牛肉に、パンチのきいた甘めのタレがかかっていて、お酒が止まらなくなること間違いなし。見た目の奇抜さに騙されそうになるけど、他の店でもなかなか食べれない絶品でした。
うん。うまい。
最初に魚を食べて、肉で締める。気がついたらお腹もいっぱいになるわけだ。しかし、肉と魚の両方をこれだけの高いレベルで提供できる立ち飲み店はそうそうない。毎日通たって飽きないし、お財布だってたいして傷まない。いやあ名店ですよ。
この店が人気の理由がよくわかったところで、いい気分にもなってきた。何杯飲んだのか記憶にない。でも、それだけ楽しかったんだ。そろそろお暇しましょう。
ご馳走さまでした、また来ますね。
実は、この立ち飲み連載は今回が最終回なんです。酒飲みの駄文に付き合ってくれてありがとうございました。素敵な店に光あれ。いつか、酒場で会いましょう。
『立ち飲み・マイ・ラブ♡ -痛みに負けるな!-』は、今回で最終回となります。ご愛読いただき、ありがとうございました!!
■『あつ盛』 住所:東京都千代田区神田神保町3-2-1 サンライトビル1F
営業時間:17時~翌2時
定休日:不定休
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。来店前にご確認ください。