人生を豊かにする昼酒のススメ

その昔、赤羽は酒飲みの聖地と呼ばれていました。だけど、コロナ禍になってずいぶんとおとなしくなってしまった。昔のことのように思えるけど、コロナ以前は、昼間からやってる店がたくさんあって、立石と並ぶ昼酒スポットとして、そこらじゅうの店が陽の高いうちから混雑していたものです。

その後、私の恩人でもある清野とおる先生の漫画の影響もあってか、赤羽はさらに有名になって垢抜けていきました。

コロナで酒屋戒厳令が出されると、店はシャッターを下ろし、町からは人の姿が消えました。しっかりルールを守るのが素敵だなと思う反面、電車に乗って赤羽に足が向く理由が減ってしまった。そんななか、赤羽に引っ越しをした知人から、昼間から元気にやっている店があると聞いて、久々に足を運ぶことにしました。

▲ご存じの方も多いでしょう?

こちらの『いこい』は、酒飲みで知らない者はいない有名店です。飲んべえの聖地・赤羽において「安い・うまい」と、その立ち位置を明確に打ち出し、以来50年にわたり人気店として君臨しています。昼間のオープンと同時に客が入るのも、この店の特徴でね。

「いったい、この人たちは何している人なんだろう」「仕事しているのかしら」と思ったりもするけど、きっと私も同じことを思われてるんでしょう。しかし、酒場でそんな詮索はゲスというもの。酒飲みには身分も預金残高も関係ありません。

▲この日も満員でした

見てください。見事なコの字カウンターを。厨房を囲むようにしたカウンターに、客たちがぎっしりと行儀良く並んでいます。こちらの店は、安くてうまいという庶民の味方なのですが、店員さんの威勢がいいからか、なじみ客の皆さんもお行儀がいい。迷惑な客がいれば注意してくれて、静かに飲んで、さっと去っていく。いい酒場にはいい客がつくんです。

▲壁にはメニューがずらり

さて、何を頼みましょう。メニューはテーブルにもあるし、壁にも貼ってある。おすすめはホワイトボードに書いてあります。

こちらの売りは、なによりその安さ。経営母体が酒屋さんということで、安価で酒を提供できることが最大の強みなんでしょう。酒が安いから、どうせならとつまみを頼みたくなる。そしたらさらに酒を飲みたくなる。幸せな気分に浸ったまま財布の紐がゆるくなり、気づかないうちにグルグルと経済を回すことができるお店なんです。

▲メニューはとにかく豊富。これ以外にもホワイトボードにおすすめが

というわけで、酒とつまみも選びましょう。赤字が店のおすすめみたいです。つまみは安いものだと100円台から。酒も200円台が中心で、財布に優しすぎてうれしくなっちゃう。人を傷つけない笑いというのが、しばらく前に流行ったけど、今年は財布を傷つけない店が流行ってほしいと思いました。