昼間の駅前ビルはまるで迷宮
新橋でとことん飲む。新橋はサラリーマンの街。労働者は仕事のあとに酒を飲むと決まっています。だからサラリーマンの聖地には、いい飲み屋がたくさんあります。
大衆的な店に、雰囲気のいい小料理屋、魚がうまいチェーン店。この街にない飲み屋はないのではないか。きっとそうなんでしょう。この街にいれば酒で困ることはありません。
昼間からやっている店も多い。昼食のあとに、ふと飲みたくなっても、そのニーズに応えてくれる店がすぐに見つかるのがうれしい。ということで、今日は早い時間からやっているお店をご紹介したいと思います。
最初はこちら。新橋駅は、地下鉄やらJRが入り組んでいて複雑な構造になっているのですが、その難解さをさらに助長しているのが駅直結のビルたち。飲食店が多く立ち並ぶこのエリアは、いい飲み屋さんも多いんです。
駅直結のこのビルは、夜はとても賑やかなんですが、さすがに昼過ぎから空いている店は少ない。ほとんどの店の電気はついていませんね。
その中をうろうろと酒を求め彷徨うおっさんふたり。政府が旗を振る禁酒法がまかり通る時代ですから、まるで闇営業の店を探しているようなワクワクに満たされます。さあ、店はどこだ。
こちらの『こひなた』は、昼からやっている立ち飲み屋さん。お手頃価格で酒を飲めるということで、奥まったわかりづらいところにある店なのに、どんどんと客がやってきます。皆さん、きっと一見さんじゃあないんでしょう。
まずは酎ハイを頼んで、メニューを吟味します。さてどれにしようと悩む、この時間が楽しい。居酒屋でよく頼むメニューというのは、その人の頭の中にきっとあるでしょう。
だけど「いつもの」を頼みたい気持ちを少しだけこらえて、その店にしかないメニューに挑戦する。それもまた楽しいんです。
メニューをぼうっと眺めてね、ちびちびと飲みながらつまみを選びます。人間は歳をとると守りに入るといいますが、何を言ってるんでしょうね。我々は飲み屋のメニュー選びで常日頃から冒険してるじゃないかと。
小銭をキャッシュトレイに置いた瞬間から、私たちの冒険は始まります。
「たくさん飲むぞ」というときは千円札を2枚置く。様子見のときは小銭をチャリンと並べる。この日の私は財布を軽くしたい気分だったので、小銭をすべて並べます。これだけで2000円近くある。この小銭の山を見てワクワクしないのは酒飲みじゃない。
この子たちが今からお酒やつまみに変わっていくんです。そして、キャッシュが減っていくと飲みすぎたから帰ろうかなと思う。この小銭の山は私にとっての通貨であると同時に、砂時計なんです。
カウンターに立つのはエキゾチックな顔立ちのおねえさん。彼女の手作りだというベトナム風春巻きをオーダーします。グランドメニューもいいけど、目の前に並べられた料理から選ぶのはやはり楽しい。
普通の店ならメニューから想像を膨らませるしかないけど、自分の目で品定めできるし、「これはなに? へえ」なんて会話も楽しい。
しかしまあ、わかってはいたけど、昼間から飲む酒というのはうまいもんですな。新橋の駅前だけど酎ハイ250円の良心価格だから、いくら飲んでも懐は痛まない。
だけど、こういう庶民的なお店で杯を重ねると、ひどく酔っ払うということも知ってる。トレイに残った小銭を回収したら次の店に向かいましょう。