小学校からの大親友とのコンビで会場の笑いをかっさらった福田。「自分のやってきたことは間違っていなかった」。うれしかった。自信も深まった。でも、人生はそう簡単には事が運ばない。一転、苦悩する日々。それでも『45』から抜け出すために『福田健悟』は前に進む。もがく苦しむ先に待つものとは――⁉
せっかくのライブ大成功もまさかのコンビ解散!
こんなに笑いを取ったのは、人生で初めてだった。舞台袖にいた先輩たちは、自分のことのように喜んでくれている。ライブ終了後。お客さんもいなくなって、挨拶をして帰ろうとすると、主催者の1人に呼び止められた。
「いや〜良かったよ」
「ありがとうございます」
「ウケてたねぇ」
「めちゃくちゃ緊張しました」
「本当? 全然そんなふうに見えなかったよ。また、次回も出てもらえる?」
「もちろんです」
うれしかった。今までやってきたことは間違っていなかった。咄嗟の判断で、切り返すことができたのは、何度か舞台に立っていたからだ。喜びに浸って立ち尽くしていると、高崎がやってきて声をかけられた。表情は曇っている。どうしたんだろう。いざなわれるようにして、外に出た。
「やめろよ」
「え?」
「捕まったとか言うなよ」
「いや、ウケたからいいだろ」
「そういう問題じゃねーよ! お前はそれで良くても、俺は良くねーんだよ」
「何言ってんだ! お前が打ち合わせのときにちゃんとやらなかったのが悪いんだろ!」
「うるせーな!」
「なんだコラ!」
昔の高崎は、笑いのためならなんでもしていた。理解してもらえなかったイライラより、笑いに対する姿勢が変わってしまったことに対する失望のほうが大きかった。家に帰ると、母にこう呼ばれた。
「45、ご飯食べたの?」
なんでだ? 僕が悪いのか? 結局、このあと高崎とは音信不通になった。こんなんだからアイツは、自分が番号で呼ばれていることすらわかってないんだ。主催者側にはなんて説明をしたらいいんだ。せっかく期待をしてくれていたのに、裏切る結果になってしまった。他の相手を探さないといけない。
そう思っていたときに、伊藤くんから連絡があった。彼はギャングイーグルの3代目だったが、引退後はチームとの関係を断っていた。
「最近お笑いやってるらしいじゃん」
「そうなんですよ」
「俺もやりたいなぁって思ってるんだけどさ」
「え!? やりましょうよ! ちょうどコンビ解散したとこなんですよ」
こうして僕たちはコンビを組むことになった。コンビ名は『ニューファンドランド』。主催者側には、相方が変わったことを報告して、ライブに出させてもらった。伊藤くんは高崎とは違って、練習にも一生懸命で、台本を覚えるスピードも早かった。その甲斐あって、初舞台は大成功。それから毎月ライブに出させてもらった。