「風の時代」――ちょうど1年半ほど前に話題になったこの言葉を、皆さんはまだ覚えているだろうか? 「地の時代」から「風の時代」へと世界秩序が移り変わり、これからの世界は知性よりも感性が重要視されるようになるという。元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏に「風の時代」をテーマにして、大きく変化している世界で必要となる考え方を聞いてみました。
※本記事は、馬渕睦夫:著『道標(みちしるべ) -日本人として生きる-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
宇宙は我々の知識ではわからないことばかり
――占星術界などでは「風の時代」が始まったということで盛り上がりを見せています。200年ぶりに時代が変わるというので、フランス革命(1789年)から始まった「地の時代」が終わったのだ、と言う人もいます。今までは形のあるものが力をふるう「地の時代」であって、これから「風の時代」になれば、感性や目に見えないものに光が当たるのではないでしょうか。
馬渕 12月22日は冬至です。冬至というのは、昔からいろんな意味で“境”であって大事な日ですね。でもね、こういったことは僕にとっては何も不思議なことではなくて、実は僕は昔から、宇宙とか天体が好きでね(笑)。
未だに不思議でしょうがないのは、これは誰も説明してくれないのだけど、なんで地球は浮かんでいるのか? なんで地球は自転しながら公転しているのか? 自転のエネルギーはどこにあるのか? 誰かきちんと答えてくれる人はいないでしょうか。
科学的には、公転は太陽の重力に引かれていくことだと思うけど、太陽にそれだけすごい重力があったら、太陽にぶつかるまで引っ張られるはずなのに、そうならずに公転しているのはナゼなのか。
それと、そもそも自転しているエネルギーはなんなのか。ちょっと教えて欲しいのだけど、誰もちゃんと説明できない(笑)。宇宙は我々の限定された知識ではわからないことばかりです。そのことと関連して一理も二理もあると思うのは、我々の存在自体が説明できないことですよ。我々はなんなのでしょうか?(笑)
知性よりも感性が重要視される
馬渕 ホーキング博士が講演したときに、「宇宙人はいるでしょうか?」と質問した人がいましてね、博士が「いますよ。あなたも宇宙人ですから」と答えたそうです。考えてみればそうですよね。我々は地球人だけど宇宙人でもある。この宇宙の存在であるわけだから。
そうすると次は、この大きな宇宙の秩序はどうなっているのか、というところまでいくわけです。そのために宇宙物理学とかがあるのだけど、また別の見極めのために、占星術などもあるのだろうと思いますね。
――風の時代は「目に見えないもの」に価値が集まるそうです。
馬渕 僕も、これまで「見えないものの価値が高まる」と言ってきたわけだけども、我々の認識力は知性によるものと感性によるものがあって、これからは感性の時代だということですよ。知性がなくなるのではなく、感性がより重要になるというね。これもまたバランスですね。
――今まで有形だったのが無形になったものでいうと、お金がそうだって言う人がいるのです。今までの現金主義で動いていたのが、ネット決済や仮想通貨に変わったのがそれだとか。同じ意味でしょうか?
馬渕 いや、ネットだって目に見えるものでしょう。つまり、リアルに手にするお金であろうが、仮想通貨であろうが、デジタルに置き換えたところで、目に見えることは見えているものでしょう。
僕が「見えないもの」と言うときは、そうではなくて「性格」とか「善の行い」とか「感性」とか……それらが「どのように世の中に影響を及ぼし合うのか」という法則などは目に見えないわけでね。
しかし、その「見えない法則」が何かの現実を生み、目に見える結果を生んでいる、という事実が不思議だなと思うわけですよ。
我々は、常に「目に見えるもの」と「見えないもの」の二つの存在、二つの法則の中にいるわけでね……と考えると、我々自身そのものも「目に見える部分」と「目に見えない部分」があるのです。
大事なのはそれに気付くことと、どちらかに偏り過ぎないということなのです。そうすると世の中は単純になる。世の中は単純なのですよ(笑)。難しい心理学とか精神分析は必要ないと僕が言っているのはそういうことです。
使い方によっては、正常な精神の人を不正常にするための学問になる危険がある。だから、そんなものを下手に勉強するより、我々は肉体的部分と精神的部分とから成り立っていると知ることのほうが、よっぽど役に立つというか、重要なことだと思いますね。
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