ゴールデンウイークが終わると「五月病」に悩む人が増えると言われています。つまらない仕事、嫌いな上司……。このような環境に置かれているのは、すべて「自分の性格」のせいだと元外交官の馬渕睦夫氏は指摘しています。では、どのように自分が変われば、周りの環境は変わるのかを聞いてみました。

※本記事は、馬渕睦夫:著『道標(みちしるべ) -日本人として生きる-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

人を変えるのではなく自分を変える

馬渕 我々は他人を変えようとして、いつも挫折したり失望したりしていますが、他人を変えようという考え方自体が、エネルギーの向け方として正しくないのです。そうではなく、自分が変われば、または自分が気付いたら、他人が変わっているということがあります。

例えば、あなたの勤め先に厳しい上司がいて、いつもコテンパンにやられていたとします。すると、どうしても上司を避けるようになりますね。できるだけ目を合わさないとか、時間が来たらサッと退社するとかね。でも、そういうことをやっていても、結局それは「逃げているだけ」になるでしょう。

僕も外務省で同じような経験がありました。でも、僕はあるときに考えを変えて、自分から積極的に怖い上司に近づくようにしたのです。そうやってこっちが態度を変えたら、上司の僕に対する態度も変わりました。不思議ですけどね。

嫌な上司だからとか、こういうことをされるのが嫌だからとか、相手に変わってもらおうと思って、いくら働きかけても効果はありません。他人を変えようとしても無理だからです。

でも、自分が変わることはできるわけです。だから、いろんな悩みを解決するのは簡単で「まずは自分が変わること」です。そのことに気付けるかどうかで、人生はガラリと変わってきますよ。

――なるほど。

▲人を変えるのではなく自分を変える イメージ:Taka / PIXTA

馬渕 言われてみれば「そうか」と思うでしょ(笑)。だから、それに気付いて、自分で自分の行動を変えられる人になったらいいのです。そうやって行動を変えられる人と変えられない人、気付きがある人とない人とでは、雲泥の差がつきますよ。

振り返ってみると、皆さんも人生でいくつか失敗をされていると思うけど、気付きが間違っていたとか、そもそも気付けなかったこととかが、たくさんあると思います。それと、思い込みによる失敗とかね。

僕もたくさんありますが、本当に些細なこと、なんでもないことなんだけど、自分を変えることができるようになってからは、人生がものすごく変わりました。

気付けるか気付けないかというのは、事実として気付くかどうか以外にも、我々の人生の態度というか、性格まで決めてしまうのです。

長所を伸ばし短所を減らすのは“魂を磨く”こと

僕は大学で教えていたとき、学生に「自分で人生は変えられるのです」と言ったことがあります。

どういうことかというと、みんな一人ひとり「個性」を持っていて、その個性が「性格」になるのです。個性とは性格であり、性格が日々の生活に現れるわけだから、性格を変えていけば人生は変わるのです。それは運命が変わるということであって、全部つながっているのです。

「運命は初めから全部決まっている」と信じ込んでいる人とか、他人の運命に憧れる人がいますけど、そうじゃない。自分の運命、例えば、いま自分がつまらない仕事をしているのは運命だと思っている人も、それは決してそうではないのです。つまらない仕事だと思っているのは、単にあなたの性格なのです。そこに気付けるかどうか。

こんなつまらない仕事しかできないのはアイツのせいだとか、社会のせいだとか、親がいい大学に入れてくれなかったからだ、とかね(笑)。

そういう僻(ひが)みはいくらでもありますが、それらは自分が全部そうしているのです。今日のあなたが今の状況にあるのは、偏(ひとえ)にあなたの責任であり、あなたの性格なのです。「責任とは性格だ」と言ったほうがわかりやすいかもしれませんけども。

――性格のせいでしたか……(汗)。

馬渕 ええ。そして、その性格は変えられるのです。性格は欠点で現れることもあるけど、長所で現れることもあるわけでね。だから、当たり前のことだけど、長所を伸ばし欠点を減らしていくことですよ。

それが、別の言い方では“魂を磨く”ということになるのであって、物事の基本はそういう簡単なことなのです。みんな、本当は知っているのです。言われてみればそうだと思うのだけど、これがなかなか気付けないんだな(笑)。

▲長所を伸ばし短所を減らすのは“魂を磨く”こと イメージ:Graphs / PIXTA