こちらが想像だにしない破壊力満点のボケで、老若男女から親しまれている芸人・ジミー大西。彼がお笑いと同じぐらい熱をもって取り組み、世界中の人々から評価されているのが画業である。

その画業が、今年30年を迎えることを記念して、彼が世界を放浪中に描いた作品、初期作や未発表作を含めた100点以上の作品を展示する、集大成ともいえる全国巡回展「POP OUT」が現在開催中(東京会場は、銀座三越で2022年4月27日~5月9日まで)だ。画業を始めたきっかけから、“ジミー”の名前の名付け親でもある明石家さんまからの金言、そして今後の目標まで話を聞いた。

 

配色はキャッチャーの配給に似ている

――画業30周年おめでとうございます。改めて、ジミーさんが絵を描くことになったきっかけを教えてください。

ジミー大西(以下、ジミー) さんまさんの運転手をしている頃、娘のIMALUちゃんと絵を描いて遊んでたんです。それを見たさんまさんが「お前、変わった絵を描くな~、紳助が番組やってるから言うといたるわ」って。EXテレビという番組で、芸能人が絵を描いて、それを視聴者の方が競り落とす、という企画だったんですが、さんまさんが「周りはうまい人ばかりやから、僕だけ売れませんでしたってオチ要員でええやろ」って。

 

――その絵に高値がついたんですよね。

ジミー はい、33万円の値がついてびっくりしました。でも、もっとびっくりしたのは、それを見ていた岡本太郎さんからお手紙をいただいたこと。そこには「キャンバスからはみ出せ」って書いてあったんです。

――ジミーさん自身は、その言葉をどういうふうに受け取ったのでしょう?

ジミー 太郎さんに見せる絵を描くために、インドへ行っている最中に亡くなってしまわれたので、残念ながら直接お会いすることはできなかったのですが、パートナーだった岡本敏子さんには、その後も良くしていただいたんです。敏子さんは「太郎は、あなたの絵をいつも楽しそうな顔で見ていたわよ」っておっしゃってて。

「キャンバスからはみ出せ」って言葉を、どういう意図で言ってくださったかはわからないのですが、僕にとってずっと大事な言葉ですし、画業をやっていこう、という大きな自信になった言葉ですね。

――ジミーさんの絵は色彩感覚が豊かで、絵のことがわからない人でも楽しめるし、実際に画家の方に聞くと、セオリーを通りじゃないからすごいと口を揃えて言います。

ジミー 最初にひとつ色を決めて塗って、次にその隣に自分が合うと思う色を塗って、という形で全ての配色を作り上げていくんです。赤の横に紫を置くと、あまり目立たないな、とか考えながら。昔はわかりやすい色で塗っていたけど、最近は中間色も使ってます。野村克也さんが昔「配球は組み立て」と言っているのを見て、僕の絵もそれに近いな、と思いました。

――型にはまらない、そんな描き方を岡本太郎さんは見抜いていたのかもしれませんね。

ジミー そもそも、僕の絵って完成形が自分の中で決まっているわけじゃないから、自分が完成だ、と思わないと完成しない。色をおいたその上からまた色を足して、とかやっちゃうから、締切があるときは、吉本の社員さんとかは苦い顔してますよ(笑)。