現役時代は浦和レッドダイヤモンズに在籍し、日本代表ではMFとして活躍した鈴木啓太氏。現在はAuB(オーブ)株式会社で代表取締役として、アスリートの腸内細菌の研究をもとに、科学的アプローチに基づいた「菌を摂る・育てる・守る」のメソッドを、一般の人々にも取り入れやすいかたちで提供しています。今回は会社の立ち上げから、菌の持つ可能性についてお伺いしました。
アスリートの便を1000人分集める苦労
新保 「アスリートの腸内細菌」の研究、ということなんですが、最初はどなたの腸内細菌を調べたんですか?
鈴木 一番最初は、ラグビー選手の松島幸太朗選手ですね。彼とは付き合いが長くて、食事をしているときに、こういうことを考えてて……という話をしている流れで「ウンチをよこせ」って言いました(笑)。
新保 食事中! シチュエーションが悪すぎますね(笑)。
鈴木 あははは!(笑) 知らない人からしたら小学生かよっていう話なんですけど、加えて「自分自身のパフォーマンスの向上にもつながるかもしれないし、次世代のアスリートのためにもなるかもしれない」と話しました。
自分もアスリートだったからよくわかるんですが、基本的にアスリートって、自分のためにコンディションを作ってるんですけど、それが実は世の中のためになるかもしれない、とは思ってないんですよね。だから、そこを丁寧に説明したら、すぐ持ってきてくれるって言ってくれて。うれしかったですね。ただ、そこがスタートで、多くの人の検体、つまり便を集めないといけないわけです。
新保 当初の目標としては、どれぐらいの方の検体を集めればよかったのでしょうか?
鈴木 だいたい1000検体くらいですかね。それも、誰でも良かったら、すぐに1000くらい集められるのかもしれないですが……いや、知らない人の便を集めるのも大変か(笑)。
新保 (笑)。でもこの場合、アスリートの方のものを集めないと意味ないですもんね。
鈴木 そうなんですよ。断られることも、もちろんありました。僕の説明も足りなかったんだと思います。ただ、それでも協力してくれるアスリートの方がいたのがうれしかったです。
新保 それは鈴木さんの人徳と熱意の賜物ですね。