フィリピン人キャストに大ウケ
そして、記念すべき初営業の日。
小田原のフィリピンパブに着いてすぐ、衣装に着替えてスイッチを入れる。控室はないのでスタッフが着替える小さな更衣室でだ。たまにキャストが入ってきて「あ、すいません」と気まずい空気になる。
スナックに毛が生えたくらいの大きさのハコで、店内はいかにも田舎のキャバレーといった内装だ。俺は音源をスタッフに手渡し、進行などを伝える。やがて オープニング曲がかかり、MCが拍手を煽り、俺は満を持してエルヴィス・プレスリーの衣装で登場する。
すると、お店のフィリピン人の女性スタッフたちは大歓声を上げる。新宿とは比べ物にならないほどのノリの良さだ。手拍子に掛け声、時には踊り出すキャストもいた。ステージは盛り上がり、それに比例するかのように客からのチップも弾む。
とにかくフィリピン人はノリがいい。ほとんどのフィリピン人は英語をペラペラ喋れるから、エルヴィスの歌は日本人よりも詳しい。ヘタに日本の人気アーティストの曲を歌うより、洋楽のほうがウェルカムだったのだと思う。
ノリノリになった俺は、ツイスト踊ったり腰を振ったりと、いつもより派手なパフォーマンスを繰り出す。もちろん、彼女たちは大喜びだ。
第1部の大盛り上がりで気をよくした俺は、それまで以上にテンションを上げて2部のショーに挑んだ。勢いあまってツイスト踊ってる最中足を捻って捻挫したが、おかげで2部も大盛況。初めての営業は大成功で幕を閉じた。
営業終了後、終電が終わっていたので、オーナーが都内まで車で送ってくれた。細かい会話はよく覚えてないがオーナーは非常に喜んでくれていた。俺も1人で30分2ステージを盛り上げたことは大きな自信になった。
だがしかし、たまたまその店のフィリピン人のノリが良かっただけだということに気づくまでに、長い時間を必要としなかった……。
(構成:キンマサタカ)