養成所で着々とスキルをつけていく福田健悟。入学してからは、名前と番号で呼び分けられる法則が少し変わり、呼ばれ方で笑いの方向性を掴んでいた。そして、入学式で出会った君島イクデイビスとコンビを組んだ福田。必ずうまくいくと踏んでいたが、君島イクデイビスが不登校になりコンビは解散になってしまう……。

桂枝雀さんからヒントを得た漫才がウケた!

悪いことをすれば『45』と呼ばれて、良いことをすれば『福田健悟』と呼ばれるルールは、少し変化していた。面白くないことをしたときに『45』と呼ばれて、面白いことをすれば『福田健悟』と呼ばれる。つまり、名前で呼ばれることを意識すれば、芸人として売れるヒントになるということだ。このモチベーションで、ネタ見せに臨もう。

次は、財布を忘れた芸人が、コンビニでギャグを披露して、商品を売ってもらおうとするネタを作った。これは、自分の中から湧き出た疑問が元になってできた。世の中の商品には全て値段がつけられている。芸人の場合は、芸が金になる。価値は、それぞれの捉え方によって違う。考えれば考えるほど不思議な商売だ。完全に褒められたわけではないが、先生は僕のことを『福田くん』と呼んだ。

次に作ったネタは、笑いの教祖が信者の前で語るネタ。これは痛烈なダメ出しを受けて、先生には『45』と呼ばれた。ダメ出しでは、お客さんのことを考えていないと言われた。そんなはずがない。お客さんを笑顔にしたいから、芸人をやっているのに心外だ。このネタは、スピリチュアルにハマっていたときの経験を元にして作った。

あのときは、タケルの死をキッカケにスピリチュアルへとのめり込んだ。大切な人の死を乗り切るための考え方を、皆にも教えてあげたほうがいいと思った。それが原因で、宗教に狂ったと言われて、納得がいかなかった。

そのときの気持ちを、発散するために作ったネタ。先生の言う通りだった。お客さんの笑顔より、自分の憂さ晴らしを優先してしまっていたのだ。この養成所で何十年と講師を務めてきた先生には、手に取るようにわかったのだろう。これを機に、スピリチュアル系の本を読むことはなくなった。最後に目にした文章はこれ。

自分の感情、最高の考え、経験に耳を傾けなさい。そのどれかが、教師に教えられたことや、本で読んだことと違っていたら、言葉のほうを忘れなさい。言葉は真実の伝達手段として、いちばんあてにならない

読書自体が間違っている、というわけではない。自分を癒やすためにしていた読書を、人を笑顔にするための読書に変えればいい。まず手に取ったのは、落語の本だった。有名な落語家さんに、桂枝雀(かつらしじゃく)さんという方がいる。枝雀さんの本には、笑いとは『緊張と緩和』である、と書いてある。

名だたる芸人さんたちも、口を揃えて同じことを言っている。緊張をするときは、どんなときか。そうだ、面接だ。この養成所に入るときの面接も緊張した。養成所じゃなくても、バイトの面接などで緊張した経験は、誰もがしているはず。完成したのは、元落語家がバイトの面接を受けるというネタ。これは信じられないほど、ウケた。

「いやぁ〜面白いなぁ。選抜に入ってもいいんだけどなぁ。でも偶然の可能性もあるからなぁ。どう?」

答えは、偶然だった。もちろん面白いと思って作ったのだが、爆発的にウケた理由はわからない。実力以上の環境に身を置いても、メッキが剥がれるのは時間の問題。そう思って、選抜には入らずに、通常の授業を受け続けることにした。とはいえ、何かを掴んだことには変わりない。