間近に迫った台湾侵攻の“時刻表”
石平 台湾問題についてアメリカ側は、どういう認識を持っていますか?
エルドリッヂ まず6年という数字ですが、なぜインド太平洋司令官が6年という数字をあげたかというと、宇宙戦で中国が優位になる期間が残り6年だからというのが、私の分析です。
元『ワシントン・タイムズ』の国防担当の記者だったビル・ガーツ氏の本によると、中国は長年にわたり宇宙戦争を想定して開発を進めており、すでにレーザーあるいはミサイルを使って、人工衛星を落とす能力を持っているといいます。
実際、2007年1月に直接上昇方式のミサイルSC₋19を発射して、自国の気象情報衛星を爆発させ、多くの宇宙ゴミを拡散しました。2015年10月からは4回ほど同様の実験を行っています。
中国は宇宙ゴミ(デブリ)の回収をロボットアームにより行っていますが、実際にこれを自国の衛星につけることで、他国の衛星に被害を与え、軌道から降ろしたり、外したりすることが可能となります。
宇宙ゴミを撤去するというのが、中国政府の表向きの発言ですが、軍事使用が目的であるのは明らかです。トランプ前大統領がつくったスペース・フォース(米宇宙軍)も、それを懸念していました。
人工衛星がなければGPSをはじめ、通信も使用できないので、現代の戦争は戦えませんが、人工衛星を中国の攻撃から防ぐ体制を構築できるのは早くても2026年です。デービッドソン提督が「あと6年」と言ったのは2021年の3月のことですから、2027年3月がその6年後となります。その間に中国が台湾侵攻する可能性が高いのではないかと危惧しています。
石平 宇宙戦略とも合致していますが、実は2027年というのは、習近平にとっても重要な“時刻表”があるのです。
というのも、本来であれば2期目を終える2022年に習近平主席は引退しなければならないが、どうやら彼は続投を目指しています。続投が決まれば習近平政権が3期目に入りますが、それが終わるのは2027年です。そして、この3期目に習近平政権が手を出す可能性は高いのです。
エルドリッヂ さらに補足すると、2027年は人民解放軍設立100周年に当たる年でもあります。したがって、軍としても何かしらの成果が欲しい節目でもあります。
ただ私は、2027年より早く台湾侵攻を行うのではないかと懸念しています。よく言われていたのは北京オリンピック後ですが、ウクライナ戦争も起こって台湾侵攻がしやすい環境になっているからです。
それは「台湾関係法」の問題があるからです。台湾関係法を結んでいない日本は、多国間での軍事連携をとることができません。日米、米台での軍事連携はあっても、日台両国にはそれがありません。
対照的に、2021年11月には1カ月にわたり、グアムで台湾の海兵隊が米軍と合同訓練を行っていることが報じられたように、何年も前から米台は軍事訓練を行ってきました。
秋の党大会後に絶対的な力を得てから台湾侵攻を行うか、あるいはその前に軍事行動に出て党大会を延期するか。いずれにせよ、かなり近い時期に中国は動くのではないかと思っています。
※本記事は、石平×ロバート・D・エルドリッヂ:著『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。