中国を創設した毛沢東に、中国をGDP世界2位の経済大国に押し上げた鄧小平。この二人と比べると大きな実績のない習近平。彼が、この偉大な指導者たちに対抗するには「台湾併合」という歴史的偉業を実現するしかないのだろうか......。
中国そして中国人の裏のウラまで知り尽くした石平氏と、米国の政治学者エルドリッヂ氏が「日本のための防衛論」について精魂を込めて語り合った。
歴史的業績がほとんどない習近平主席
石平 台湾が危ないのは、習近平政権が看板に掲げているのが「民族の復興」だからです。この政策は台湾併合を前提としており、これにより歴史的偉業を成し遂げようとしているのです。
また、台湾を確保することにより、第一列島戦、第二列島戦を突破して、太平洋に出るという野望もあるのでしょう。
中国はアメリカとの貿易戦争でファーウェイの苦境が示すように、特に最先端技術において不利に立たされていますが、その最先端の半導体をつくる技術があるというのも、中国が台湾に手を出したい理由になっています。
さらに忘れてならない視点は、プーチン大統領に勝るとも劣らない習近平主席の個人的な野望も加わっていることです。
独裁者となり定年制を撤廃して終身独裁の地位を得たのも、それを成し遂げるためです。しかし、習近平主席には歴史的業績がほとんどありません。
中国共産党の歴史観では、毛沢東は共産党の革命を勝利に導き、中国を創設した人物であり、鄧小平は文化大革命の混乱を収拾し、鄧小平理論を掲げて改革開放路線を推進、中国をGDP世界2位の経済大国に押し上げと評価されています。したがって、これに対抗するためには、二人の偉大な指導者でさえ成し遂げられなかった「台湾併合」という歴史的偉業を実現するしかないのです。
そして、それを達成するうえで重要なのは、軍に対しての絶対的な主導権の確立です。だいたい戦争をやれば軍を掌握できるようになります。鄧小平もベトナム戦争を発動したことにより軍を掌握しました。戦時体制をつくりだすことで国内の経済問題の解決にもなるので一石二鳥です。
だからこそ、ここ数年にわたり習近平は、台湾併合に向けて着々と準備を整えています。アメリカ側も6年以内に台湾有事が起きると言い出すまでになりました。