結成30周年を迎え、先日アリーナツアーを東京ドーム2Daysで終えたばかりのL'Arc〜en〜Ciel。hyde(Vo)、ken(Gt)、tetsuya(Ba)、yukihiro(Dr)からなるラルクは、2022年5月、これまで発表したアルバムをリマスターしたものをまとめた『L’Arc~en~Ciel 30th L’Anniversary「L’Album Complete Box -Remastered Edition-」』を発表。

多くの人が知る「HONEY」「snow drop」「winter fall」などのヒットシングルだけじゃない、アルバム内の隠れた名曲にも注目が集まっています。

そこで今回、自身も音楽活動を行い、先日のアリーナツアーもチケットを購入して見に行ったミュージシャンの高橋翔(ex. 昆虫キッズ)に、音楽家とファンの目線を交えた「L'Arc〜en〜Cielのオススメしたい曲」を、インディーズ時代のアルバム『DUNE』から1998年リリースの『HEART』までのなかから5曲を選んでもらいました!

ミュージシャンだからこそ語れる、L'Arc〜en〜Cielのスゴさを感じてください。

桂正和のアニメ『D・N・A2』で知ったラルク

1994年、小学4年生だった俺は生まれて初めて、他人に対して“あれ、思ったよりみんなについていけてないな”と違和感と焦りを感じていた。

具体的に言うと、クラスメイトたちが話すテレビやマンガの話題や、男子女子の恋愛が視野に入ったようなコミュニケーションに全くついていけてなかった。さっきまで団地で鬼ごっこをしたり、公園でバカみたいにボールを追っかけてた連中は、大人しく家でドラクエに興じたり、金持ちのボンボンの家に入り浸ってミニ四駆をコースで走らせたり。

俺はまだ、みんなと一緒に駆けずり回っていたかったけど、公園で遊ぶことはほとんどなくなってしまった。趣味も特技も、デカい家も最新ゲームもなく、勉強や運動も平均そこそこの男の子は、クラスでも自然と隅っこが定席になるものだ。

俺は初めて“学校がつまらないな”と思うようになった。ただただ楽しくはしゃいで、ふざけていたかったのに……。なんだかそれすら、とてもみっともないことのようだった。

ある日の給食の時間。クラスメイトのUくんが「翔さ、DNA2ってアニメ見てる?」
と尋ねてきた。俺はそのアニメをまったく知らなかったけど、”知らない”と返すことがとても恥ずかしく思えて、答えをはぐらかした。

曖昧な態度を見透かしたのか、Uくんは「主題歌がとにかくかっこいいんだよ。●●ってバンドなんだけど。兄ちゃんがビデオ録画してるから、あとで家で見ようぜ?」と声をかけてくれた。

うれしかったけど、また劣等感じみたものを覚えてしまうことが少し怖かった。まして、Uくんは同じ小4とは思えないほど雰囲気が大人びて身長も高く、いつもクールな男子だった。だが、誘いを断る理由も思いつかなくて、しぶしぶ放課後にUくんの家に向かった。

Uくんが言った“DNA2”。ちなみに、正式には『D・N・A2 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜』は、当時『少年ジャンプ』で連載していた桂正和によるSF漫画。正直、小4でこの作品を楽しめるのは、感覚がかなり大人びてないと難しいと思う。

話は戻り、Uくんは自宅のリビングに俺を招くなり、すぐにVHS再生機の電源を入れた。「このバンドかっこいいから」と少し興奮した様子で彼は再生ボタンを押す。

90秒ほどのオープニングが終わり、真っ先にUくんに聞いた。

「これ歌ってるの、なんていうバンドなの?!」

彼は優しく微笑みながら答えた「L'Arc〜en〜Cielってバンド」。

〇L'Arc~en~Ciel「Blurry Eyes」-Music Clip-

前置きが長くなりましたが、このコラムは「私とラルク」というテーマでの、ごく個人的な文章。僭越ながら私は高橋翔と申します。2015年まで昆虫キッズというバンドで活動しており、バンド活動終了後の現在は、ソロミュージシャンという形でコツコツやってます。

先ほど書いたように、ラルクとの出会いは1994年。彼らがメジャーデビューした年です。それから中学、高校時代も彼らを追い続け、自分の高校卒業のタイミングくらいでラルクも長い活動休止に入りますが、2004年の復活後の曲群は琴線に触れることがなく、新作はほとんどノータッチでした。

ただ、2011年にリリースしたシングル『XXX』の攻めた内容が凄まじく、約11年振りにラルクのシングルを購入。これがきっかけとなって、再びラルクを追いかけるようになりました。

正直、ラルクについて自由に書くことって非常に難しいんです。バンド30年の歴史のなかで出典されたものは、既知であればあるほど、マニュアルみたいになっておもしろくないんです。情報ベース的なものならWikipediaを読んだりすればいいし、マニアックな事柄を深堀りするのなら、ファンサイトがいくらでもあります。

なので、自分が今でも聴き続けてるL'Arc〜en〜Cielの楽曲から5曲をセレクトして、“この曲、聴いたことないから聴いてみよう”ってきっかけになればいいかなということで、早速参りましょう。

ちなみに、順位ではなくてリリース順での記載です。流れで聴くとラルクの持つ楽曲の振り幅が存分に堪能できるはずです。