“なんばのエンタメ”が最高のミュージカルへと昇華

そしていよいよ開幕。まずは安定の新喜劇からストーリーは展開していきます。あの世界観を明治座で堪能できるのも贅沢な話ですが、ここで気づいたのが、NMB48の演技力。いわゆる“棒読み”のメンバーがいないんです。

そして、いちばん驚いたのが見事なアドリブ。芸人さんからの突然のアドリブに対して、愛想笑いではなく、堂々とおもろいアドリブを返しているではないですか! 気づけば記者もお客さんと一緒に大きな拍手を送っていました。

続いて繰り広げられたのは、NMB48による華やかなLIVE。『ナギイチ』といった大ヒット曲を交えながら、舞台をさらに盛り上げていきます。ただ、それだけでは終わらないのが『ぐれいてすと な 笑まん』。NMB48のメンバーたちがボケとツッコみを交えながら、堂々と丁々発止なご挨拶を披露。ここでは芸人さんの力をまったく借りていないのに、このクォリティー。お世辞抜きに爆笑ものです。

続いて、舞台は病院の一室へ。入院中の川畑座長、医師役のすっちー、そして看護師衣装に身を包んだNMBのメンバーによるコントが展開していくのですが、脚本は川畑座長自らが手掛けたとあって、その品質は保証済み。

地球とよく似た星の、大阪によく似た国「なんば」で、“アホウイルス”が蔓延してしまい、お笑い集団の新喜劇と、アイドルグループのNMB48が存亡の危機に立たされる――という一見、破天荒なストーリーですが、過去と現在を行き来する重層なストーリーは小説にして出版してほしいぐらいです、本当に。現実社会の“新型コロナウイルス”のなかで、舞台に立ち続けた川畑座長の苦悩と希望も表れているように感じました。

そして、ここからいよいよミュージカル色が高まっていきます。なんといっても注目点は、ブロードウェイの演出も手掛ける、あの玉野和紀さんが“なんばのエンタメ”に挑むところ。玉野さんといえば演出、振り付け、そして俳優として世界的な評価と人気を得ているオールラウンドなエンターテインナー。また、日本を代表するタップダンサーです。

公演前に川畑座長が「玉野さんの手にかかれば、毎週やっている新喜劇もミュージカルになる」と話した言葉に偽りはなく、新喜劇メンバーとNMB48によるミュージカルタイムが放つ至高の輝きは唯一無二! 見ているこちらも、まるで舞台上で一緒に踊っているような一体感に会場は包まれました。衣装もセットもとてもゴージャスで、会場の隅から隅まで本気度を感じずにはいられませんでした。2か月におよんだ稽古も伊達じゃない!

そして、あの陣内智則さんがサプライズで登場! 一転して舞台はバラエティー番組の生放送と化し、なぜかNMB48のメンバーたちによる暴露合戦に(笑)。「渋谷凪咲は私服がめちゃくちゃダサイ」「上西怜はパンツがダサイ」といったドキっとする裏話から、安部若菜のとんでもエピソードが次々と明らかになるなど、メンバーたちの体を張った(?)掛け合いが、さらに会場を盛り上げていきます。

新喜劇、ミュージカル、陣内さんのMC、そしてお待ちかねの“乳首ドリル”などなど、最初から最後までまったく飽きを感じさせない展開は、まさに頭から尻尾までアンコの詰まったタイ焼き。しかも、いくら食べても胸やけしないところが、『ぐれいてすと な 笑まん』の完成度の高さを物語っています。