女装したオッサンの登場で大爆笑
全然売れていなかった芸人が、ある日突然スターになっていくのを見たことがある。はなわさん、ホリさん、前健さんの3人だ。
佐賀県のあるあるネタで売れたはなわさんは、ショーパブではネタによってウケに波があった。爆笑をかっさらう日もあれば、まったくウケず不貞腐れてステージをハケるときもあった。
プライベートでは結構ぶっ飛んだことする人ではあったが(詳しい内容はとても書けない)、ギリギリのラインで周りをいじって笑わせるのがうまかった。人柄もよく、気難しい人ともうまく付き合っていて、俺もずいぶん可愛がってもらった。
松浦亜弥のモノマネで一世を風靡した前田健さんは、あややの前は松田聖子のネタが十八番だった。暗転中に松田聖子のイントロが流れ、いざ歌い出したら「女装したオッサンじゃねえか」という笑いはテッパン。とはいえ、それでも客にハマらず全く笑いが取れない日もあった。
ホリさんだってそうだ。喋りモノマネの連続ネタを得意としていたが、ウケるときもあれば、そうでない日もあった。
だが、自分とたいして差がないと思っていた3人は、あるときからテレビに引っ張りだこになり、超絶なブレイクを果たす。
これまで売れていく芸人を何人も見てきたが、やはり人(にん:人柄、人となり)が面白い人から売れてゆく。
また、モノマネで売れる人は観察力や耳がとてもいいという共通点がある。旬な人の見つけ方や、仕草や喋り方を切り取る目線がやはり優れていると思ったし、前健さんやホリさんのモノマネには、鋭い観察力とオリジナリティがあった。
売れてからの3人はとにかく忙しそうだったが、周りに対しての態度はそれまでと全く変わらなかった。俺が見てきて思うのは、売れて変わるのは本人ではなく周りだ。今まで通りに暮らしていても、売れっ子という色眼鏡で見られてしまう。
たとえば、前健さんはオネエらしく、辛口な意見を人を選ばずズバズバ言うタイプだったけど、売れてから「前健はテングだ」「売れて変わった」と言われているのを耳にした。いやいや、あの人は売れてない頃からズバズバ言うタイプだったから! あの人は何も変わってないし、俺からすれば変わったのは周りだよ。疲れてて元気がなかっただけなのに「愛想がなくなった」と言われる売れっ子も大変だ。