ショーパブ芸人が同じネタを繰り返す3つの理由

キサラの舞台に出るようになって2、3年。ようやくステージに立つことにも慣れてきた。俺はいろんな新ネタを試す場として魅力を感じる一方で、ショーパブというものに疑問を感じ始めていた。

 初めてショーパブを見たときの感動は今でも覚えている。世間に知られていないだけで、面白いステージを見せてくれる芸人が、たくさんいることに俺は驚いた。

だが、いざ自分が演者側になってみると、ほとんどのショーパブに出てる芸人が、同じネタの繰り返しているだけの生ぬるい世界だと思うようになっていた。

ステージでやる演目も、構成をちょこっと変えるだけ。一言一句同じことを繰り返す芸人もいた。そんな芸人がメジャーになれるわけがない。

なぜショーパブで芸人が同じネタを繰り返すのか、それには3つの理由がある。

1つめは初見のお客さんが多いこと。新宿という場所がら、観光客も多い。地方からきたハトバスツアーのお客さんは、東京の名所のひとつとして、ショーパブに足を運ぶ。一見さんのお客さんなので、いつもと同じネタだったとしても、ほぼ間違いなくウケてくれるのだ。

2つめは、お客さんが酒に酔っていてハードルが下がっていることだ。久しぶりに見に来たお客さんでも、時間があいてしまえば前回の内容なんてあまり覚えていない。おまけに酒に酔っているから、毎度楽しそうに笑ってくれる。

3つめは、これはものまね業界独特の慣習なのだが、ものまね芸人は売れてなくても営業が定期的に入ってくるからだ。ショーパブのステージと月に何本かの営業があれば、バイトをしなくても生活ができる。だから、ストイックに新ネタを作らなくとも、同じことの繰り返しで食っていけたのだ。

一方、お笑い芸人はオリジナルのネタが勝負なので、売れない限り営業にはほとんど呼ばれないが、ものまねは既に有名なアーティストや役者、芸人などの真似をするのでネタにハズレがない。

憧れていた芸人の世界に入ったものの、いきなりリアルな現実を見てしまった俺は打ちひしがれた。そして、俺はショーパブで満足したいわけじゃないことにも改めて気づかされた。