インタレスティングたけしに助けられている

――この本には、いわゆる“地下芸人”と呼ばれる方々がたくさん出てきて、自分も中野twlとかにお笑いを見に行っていたので、そのときのことを思い出すんですけど、大城さんが“この人面白いな、なにか歯車が噛み合えばドカーンと売れるかもな”と思う人はいますか?

大城 長く続けている人は全員面白いと思いますね。ちょっと話はそれるかもしれないですが、この前の『水曜日のダウンタウン』にインタレスティングたけしと出られたのはとてもうれしかったし、新日本プロレスに乗り込んでいくFMWみたいな気持ちでいました(笑)。

――なるほど、王道に乗り込んでいくデスマッチみたいな(笑)。

大城 そうですそうです(笑)。個人的には、ゴールデンタイムでインタレスティングたけしと、二人きりの2分30秒を提供できた、これは地下芸人界の歴史が変わったんじゃないかと思っています。

――たしかに、あの時間でインタレスティングたけしという人を、ダウンタウンさんを含め、多くの人々が認識した瞬間ですもんね。

大城 インタレスティングたけしは、最近全てを諦めていたんですけど、あの収録からまた前向きになったし、僕は僕で彼にあの収録で救われたし、もっと言うと、これまでも彼に救われた瞬間がたくさんあるんです。だから“こいつ売れるんちゃうかな”というおこがましい気持ちじゃなく、僕が助けてもらってる。これだけですね。

 

チャンス大城役はウエンツ瑛士で

――美しい話ですね…! 大城さんを見ていると、普通の人なら直面する、“夢を追うのか、それとも諦めるのか”みたいな葛藤をうちに秘めたまま20代、30代を過ごされたんじゃないかな、と感じるんですが、そのあたりはどう折り合いをつけていたんですか?

大城 正直、僕そうやって“好きなことで食べていくかどうか”みたいな意識が芽生えたのって、ここ最近なんです。

――ええっ! 本当ですか?

大城 ホンマ、若い頃って何も考えてない、何も頑張ってない、ただ酒を飲んでただけです。だから、酒をやめてから、普通の20代の人たちが考えたり悩んだりしてることに直面しているので、呆れられるかもしれんけど楽しいんです。まあ不安があるとしたら、僕の話してる面白いことって、大部分がお酒を飲んでいる時期の話なので。じゃあ、ここから禁酒したチャンス大城が面白いかって言われると…って感じです(笑)。

――いや、絶対大丈夫だと思いますよ(笑)。

大城 酒やめろ!って言ってくれたせいじさんが「手錠をかけたるから飲んでもええで」って言ってくださったこともあったんですけど、それでも飲まなかったです、ちょっと揺らぎましたけど、怖くて(笑)。やっぱり飲む打つ買う、そういうザ・芸人みたいなことに対して憧れもあったんですけど、もう今はないですね。

――素晴らしいと思います。壮絶なエピソードがたくさん書かれている本ですが、読めば勇気づけられる人がいっぱいいると思います。

大城 鬱病になってしまったとき、本当に一歩間違えたら死んでいたかもな、と思うことがたくさんあったんです。ただ「ずっと死にたい、死にたいと思ってたけど、あなたが出てた『すべらない話』を見て、死ぬのをやめました、ありがとうございます」ってお手紙をいただいたことがあって、本当に生きてて良かったなって思ったんです。だから酒飲んでしくじったサラリーマンの方がこれを読んで、“チャンス大城ってバカやなあ”って笑ってくれて、悩んでたこととかを解消してくれたらって思いますね。

――本当、そういう本になると思います。

大城 学校の先生からも連絡いただいて、「うちの学校の図書館に置くように言っておきました!」って、すごくうれしかったんやけど、“あれ?この本、不良に命令されて図書館の本を盗み出す話入ってるけど……”って気づいて(笑)。

――あはははは!(笑)。最後にお聞きしたいのは、この本の帯にジュニアさんが“即映画化”とコメントを寄せてましたが、実際に映画化されるとして、御本人の役は誰がいいですか?

大城 僕の役はウエンツ瑛士さんがいいですね。冗談もわかってやってくれそうな気がするし、尼崎の雰囲気にも合ってるんじゃないかと思って。

――合ってますか…?(笑)

大城 千原兄弟役は二人とも背が高いので、TOKIOの長瀬くんと松岡くん……あ、でも長瀬くんはもう事務所を辞められたから難しいか……。

――気にするところ、そこじゃないです!(笑)

プロフィール
 
チャンス大城
芸人。チャンス大城。1975年生まれ、兵庫県尼崎市出身。中学3年で大阪NSCに入るが退所し、定時制高校に通う。その後、再び大阪NSCに入るも、また退所。上京後、地下芸人時代を経て、現在は吉本興業所属芸人として活躍する。座右の銘「おまえ、その執念、忘れるなよ」。Twitter:@ooshirofumiaki