相方候補として目の前に現れたのはあの男!

マネージャーは、世間には僕の応援をしてくれる人が、多いと言っていた。それなら、テレビじゃなくてもいい。僕を信じ続けてくれている人たちのために、何かをしたい。

1から始めるとなったら、やはり舞台だ。とはいっても、ファンのみんなは、漫才師としての僕を応援してくれていた。相方がいない今、どうすればいいのだろう。今の僕と、コンビを組みたいという芸人を見つけるのは、至難の業だ。1ヶ月が経ち、2ヶ月が経ち、ついに貯金が底を尽きようとしていた頃。

「福田さん。今回の相方募集で一応、応募があったんですけど」

「え!? マジで!? どんな人!?」

「いや〜、それが……ズブのド素人なんですよ」

贅沢は言ってられない。

「いいじゃん、いいじゃん。今の俺と組みたいって言ってくれてるだけで、有り難いんだからさ」

「わかりました。ちなみに今、本社に来てるんですけど。どうしますか?」

善は急げだ。

「あぁ、そしたら今から行くから待ってもらえるかな?」

どんな人なんだろう。素人なのに、今回の募集に応募するということは、相当お笑いが好きな人だ。それに、ここまで来るということは行動力がある。学校のクラスにいる人気者タイプかもしれない。明るくて元気で爽やかな男が相方になったら、今回のスキャンダルでついたマイナスのイメージも払拭されるに違いない。

そんなことを考えていたら、気づいたときには、本社に着いていた。そして案内されるがままに、相手がいる部屋に通されて、ドアを開けた。すると、なんと野口徹朗がニヤニヤして立っていた。

「あれ? 何してるんですか?」

「私じゃダメですか?」

「え、ちょっと待って! 俺とコンビ組みたい人がいるって野口さん?」

「昔から、お笑いが大好きだったんですよね。コンビ名、何にします?」

「いや、急にそんなこと言われても……」

「あ! わかった! 私と福田さんに共通しているものにしましょうよ」

「共通してるもの?」

「私は福田さんの名前を取り戻す係でした。いわば、心の牢獄から自由になるのを手伝ったようなもの……。あ! いいの思いついた! こんなのどうですか?」

「なんですか?」

「プリズンフリー」

数ヶ月後。

「プリズンフリーさん、準備はよろしいでしょうか?」

「はい」

たくさんの人で埋まっている客席には、翔吾とマナミも座っていた。

「では明転まで、6、5、4……」

舞台はライトで、照らされた。

「どうもー。プリズンフリーです。よろしくお願いします」

「いやーうれしいですね。たくさんのご来場ありがとうごさいます。僕らのこと知らない方もいらっしゃると思うので、自己紹介から始めましょうか」

「そうですね」

「皆さんから見て左の僕は、野口徹朗と言いまして、彼の名前は……」

「はい」

「45です」

「誰が45だよ! 俺は45じゃない! 俺の名前は、福田健悟だ」