先月の札幌記念で106万馬券を当てた!!

――あははは(笑)。YouTubeも拝見しているんですが、札幌記念で大きな配当を当てましたよね?

渡辺 よくご存知で! そうなんです、106万4700円当てさせていただきまして……。

――集中できているのかな? とか、単独に向けては運気を溜めていたほうが良かったんじゃないのか? とか、余計なお世話なんですけど……。

渡辺 たしかになぁ……そこ全然考えてなかったな……。うーん……めちゃくちゃ運使っちゃったな……(笑)。

▲考えてなかった~と悔しがる渡辺

――あははは(笑)。ただこうやって競馬も好きなことを仕事にして、結果を出しているのがすごいなと思うんですけど、例えば、渡辺さんくらいの芸歴になると、同期とか同年代は辞められている方がほとんどだと思うんです。渡辺さんが辞める方々の後ろ姿を見ながら、芸人を続けているモチベーションについてお聞きしたいです。

渡辺 そもそも芸人を始めた段階で、ずっと売れなくて食えなくても、バイトすればいいやって思ってたんです。もちろん、絶対売れてやろうという気持ちで始めてますよ、その気持ちはめちゃくちゃ強いと思います。それでも、どこかで腹をくくってたんです。

――なるほど。だから、売れる売れないがモチベーションにならないってことですね。特に最近だと錦鯉さん、ザコシさんもバイきんぐさんも遅咲きの芸人と言えますし。SMAの芸人さんに多いような印象を受けるのですが……。

渡辺 芸人にとって居心地の良い事務所だと思います。とても芸人ファーストですし。

――それはすごく伝わってきます。SMAという事務所の強みと弱みをお教えいただけますか?

渡辺 強みは結束力、仲の良さですね。いつもライブが終わったあと、Beach V(びーちぶ)で必ず打ち上げをやるんですよ。そこでその日やったネタの良い所やダメな所とか、ずっとお笑いの話をするんです。自分のことじゃなくて、お互いの話をする。これは結束力のある事務所だからこその強みですね。

――では、ウィークポイントは?

渡辺 仲の良すぎるところですかね(苦笑)。ぬるま湯になっちゃうんですよ。僕と同い年で売れていない後輩がいるんですよ。バイトして、1Kのアパート住んで、独身で、売れてない。それでも、とびきりの笑顔で笑ってるんですよ。危機感がなくなっちゃうんですよね。僕もそうですけど、本当に切羽詰まって、ケツ叩かれないとやらないような芸人が多いんです。

――たしかに、居心地がいいとハングリー精神みたいなものは薄くなりがちかもしれませんね。

渡辺 そうなんですよ。これが吉本興業さんとかだと、同期がめちゃくちゃ売れてる、なんなら後輩がすごく売れて焦る、とかがあると思うんです。そこで目を覚まして頑張るとか、心が折れて辞めるとか、あると思うんですけど、良い意味でも悪い意味でも、SMAは居心地がいいんです。

辞めた芸人に対してのザコシ金言

――SMAは個性的な芸人さんが多いですけど、上品で清潔感がありますよね。

渡辺 あ、それはそうですね。上品さとつながる話かどうかわからないですけど、前にだーりんずの(松本)りんすが、付き合ってる女性芸人のゆーびーむ☆とYouTubeをやってて、それをシショウがちょっとダメ出しをしてて、「それすると(彼女と一緒にYouTubeとか撮ると)、結局デれてまうねん、だからアカンねん」って。そういう“これはしちゃダメだよな”みたいな暗黙の了解が共有できているかもしれないですね。

――なるほど。

渡辺 あとシショウが言ってて、ずっと胸に残ってる言葉なんですけど、アンドレっていうコンビがSMAにいて。一人は、にゃんこスターのスーパー3助、もう一人はゴールドハンバーグっていう芸人のコンビだったんですが、今で言うランジャタイみたいなコンビだったんです。無茶苦茶だけど、オリジナリティがあって、華もあって、二人とも可愛い顔してて。芸人も認めていて、特にゴールドハンバーグのほうが「あいつは面白い」って可愛がられたんです。

でも、一般の人には伝わりづらいネタをやっていたから、なかなか売れなくて、ゴールドハンバーグが芸人を辞めちゃったんですよ。それから何年かして、なんとなくシショウに「なんでゴールドハンバーグ売れなかったんですかね?」って聞いたんですよ。僕はてっきり“トークできなかったからな”とか、“ネタがテレビ向きじゃなかったからな”とか言うかと思ったら、ひと言「辞めてもうたからなあ」って言ったんです。

――うわあ……すごい……。

渡辺 ね、シビレますよね?(笑) そうなんですよ。なるほど、辞めたら終わりだもんなって。だから、売れなかったんじゃなくて、“売れないということを自分で決めた”ってことなんですよね。

――ザコシさんに言われると、めちゃくちゃ含蓄がありますね。その話に当てはめていうと、渡辺さんはピンですから、コンビの相方が辞めちゃったからできなくなった、とかはなくて、自分が辞めるって思わない限りは、ずっと続いていきますもんね。

渡辺 そうですね。でも、続けようと思ったら芸人ってずっと続けられるんですよ、特にさっき話に出た、何十年も売れてない芸人にとっては、辞めるより続けるほうが楽って考え方の人もいるだろうし。辞めるっていう判断をするのも、すごく勇気のいることだというのは理解しているつもりです。ダラダラ続けるのは誰だってできると思うんです。

――なるほど、難しい話ですね。たしか『M-1』も、はじまりはダラダラ続けている芸人に対して“もう諦めろ”っていうメッセージもあったと聞きますね。だからこその10年制限だったって。にしても、R-1グランプリがいきなりルールを変えたのは暴挙だと思ってますけど……。だからこそ、芸歴制限のないピン芸人のための賞レースを作って欲しいし、そういうものがあったときのために、渡辺さんが単独を開催するのはとてもうれしいです。