ここ数年、競馬好き芸人として『ウイニング競馬』(テレビ東京/BSテレ東)レギュラー出演を中心に、幅広い活躍を見せているキャプテン渡辺。しかし、彼の原点は漫談を芸風とする、れっきとした生粋のお笑い芸人。クズを売りにしたキャラクターに扮した「クズ漫談」、ギャンブラー・売れない芸人・深夜バイトあるあるなどを題材にした「あるある漫談」を筆頭にストロングスタイルの漫談を披露し、『R-1ぐらんぷり』では2年連続ファイナリストとなった。

10月4日(火)に東京・座・高円寺2で行う単独ライブ『漫談スタイル』は、細かなプライドをかなぐり捨て、溜まりに溜まったネタのストックを全放出する。単独ライブ公演は実に11年ぶり、最初から最後までセンターマイク1本で勝負する独演会プログラムになると息巻いている。

かねてから、芸人としてのキャプテン渡辺をもっと見たいと感じていたニュースクランチ編集部員が、11年ぶりの単独ライブに向けての意気込みを聞いた。

▲11年ぶりの単独への意気込みを語るキャプテン渡辺

“芸人なの? 競馬タレントなの?”に後ろめたさ

――単独ライブが11年ぶりということで、ここまで期間が空いたのには何か理由があったんでしょうか?

キャプテン渡辺(以下、渡辺) 芸歴制限ができて、R-1グランプリに出られなくなったのは大きいですね。基本、ピン芸人はR-1のために新ネタを作っていたと思うんですよ。それがなくなったとなると、なんのためにネタを作って、どこでやるためのネタなんだ? という考えがチラつくんですよね。ライブでお客さんにウケたらいいやっていう芸歴でもないし。そうすると、ネタを作るモチベーションが著しく低下しちゃって、これはまずいな、と。

――なるほど。でも、そこから腰を上げるのも容易なことではないですよね。

渡辺 そうなんです。ネタを作るには単独ライブをうたなきゃいけないんですけど、R-1の参加資格がなくなってから、ずっと“単独ライブやるやる詐欺”を繰り返していたんですが……。このたび、とうとうハリウッドザコシショウさんに、その詐欺を見つかったって感じですね(苦笑)。「単独をやれよ」って。

――SMA所属の芸人さんにとって、ザコシさんの言葉が持つ意味合いというのは大きいということですか?

渡辺 大きいですね。シショウは、そういうふうには僕に言ってこないですけど、よく言われるのは「芸人なの? 競馬タレントなの?」って言葉なんです。それにずっと後ろめたさを感じていたので、余計に響いたのかもしれません。

――僕は人並みに競馬が好きなので、『ウイニング競馬』も拝見させていただいているんですが、あの番組のあの位置というのは、芸人としての面白さと競馬への愛情、そのどちらかでも欠けていたら何年もできないと思うんです。だから、渡辺さんってすごいなって。

渡辺 本当に全員が全員、インタビュアーさんみたいに思ってくれてたら、めちゃくちゃ助かるんですけど……(笑)。

――あはははは(笑)。

渡辺 その感想はすごくうれしいし、あの仕事はずっと続けさせていただきたいんですが、変な話、ウイニング競馬がゴールデンタイムで20%近く視聴率のある国民的番組だったら、そう思えていたかもしれないです。でもやはり、“これで芸人って言えるのかな?”という葛藤があるし、そういう視線を感じるのも確かです。それでもなかなか決心できなかったところを、シショウにケツを叩かれた感じですね(苦笑)。言葉だけだとやらないから、会場も押さえて、自分の退路を断って。

――退路を断った、で言うと、この単独ライブの『漫談スタイル』というタイトルにも驚きました。漫談、と銘打ったからには誤魔化しようがない。

渡辺 そうですね。例えば、R-1の決勝に出た「~だよ」って言うクズ人間のネタは、キャラを入れているから今回はやらないです。

――え、あれも!?

渡辺 はい。一人コントになっちゃうのはやらないで、漫談で勝負しようと。一応、事務所ライブがあったので、11年のあいだに新ネタはちょこちょこ作っていたし、R-1がなくなる前はひと月に1本、新ネタを必ず作っていたので。それでも、やはりブランクはありますけど。

――漫談って、ネタ作りがとても特殊なんじゃないかなと想像するんですが。

渡辺 そうですね、僕の場合ですが、まずテーマを決めます。で、過去の誰かの謎発言を思い出す。ざっくりとこんな感じです。

――たとえば、フォーマットがある漫才とかだと、ある程度はフリ・ボケとかで構成は作りやすい気がするんですが、漫談で構成とか山場を作るのは難しい気がします。

渡辺 難しいですね。でも、例えば、だいたひかるさんとか、ヒロシさんとか、ああいうスタイル、あれも決まったフレーズはあるけど、漫談だと僕は思っていて、あれはあれで僕は大変だと思っているんです。フォーマットがあるから楽、というわけでは決してないと思います。

――なるほど。漫談というと、あべこうじさんなんかをイメージします。

渡辺 そうですね、あのスタイルでドカーンとウケるのは本当難しくて、すごいなと思います。

――あべさんもそうですが、渡辺さんのネタも、めちゃくちゃ台本がしっかりしているネタだと感じるのですが。

渡辺 そんなところまで分析してくださって、ありがとうございます(笑)。でもたしかに、当時は一語一句にめちゃくちゃこだわってましたね。本番直前まで細かいところを直して。

――本人を前にお世辞を言うわけじゃないですが、R-1グランプリというものができた経緯も、そもそもがピンの話芸ナンバーワンを決める大会だっただろうから、フリップとかを使わない、渡辺さんのようなストロングスタイルの漫談が好きだったんで、ザコシさんにケツを叩かれた、というのをきっかけに単独ライブをやってくれるのが、とてもうれしいです。

渡辺 こうやって偉そうなことを言ってますけど、ネタ作りを進めていて、めちゃくちゃ追い詰められています(笑)。自分でもかなりハードルを高くしているんで、それを越えていく作業ですね。で、僕の良くないところなんですけど、追い詰められないと頭が働かないんですよ、前日くらいにならないと作れない(笑)。