土曜ナイトドラマ『もしも、イケメンだけの高校があったら』(テレビ朝日系)で剣道一筋の純和風イケメン高校生・神宮源二郎を演じ、注目を集めた水沢林太郎。錚々(そうそう)たるメンバーの中でも際立ってスタイル抜群だが、じつは現役メンズノンノモデルでもある。
そんな彼の最新出演ドラマが、ABEMAオリジナル連続ドラマ『覆面D』。現代の高校生たちが直面している社会問題と、それに向き合う教師を描いたオリジナルストーリーの社会派学園エンターテインメントで、主演の関口メンディーが “理想の教師像”に悩む高校教師・大地大輔を演じ、水沢は幼い弟や祖父の介護で学校に通うのが大変なヤングケアラーの生徒・武藤啓に扮している。
最初こそ大輔を受け入れられない武藤が、学校には隠してプロレスラー『覆面D』として活動する大輔の姿を目の当たりにし、次第に変わっていくのも見どころのひとつ。教師志望だったメンディーのもと、現場も本物の学校のように生徒役みんながまとまっていったとか。ドラマ・映画ではクールな役どころが多い水沢すら、「自分の中にこんなにも熱い思いが宿っていたとは」と気づかされた、大切な作品になったと振り返る。
主演の関口メンディーと打ち解け大きな影響を受けた
――『覆面D』に出演したいと思った理由を教えてください。
水沢 今までにないコンセプトや世界観を持つ、新ジャンルのドラマになりそうだと思いました。参加して少しでも盛り上げることができるなら、ぜひやらせていただきたい。もちろん、単純に主演がメンディーさんだからというのもあります。
――メンディーさんにはどんなイメージがありましたか。
水沢 ダンスを3~4年ほど習っていた時期がありまして、LDHさんのグループのパフォーマンスを見て踊っていたこともあります。メンディーさんのことも、ずっとテレビで見ていました。 テレビで受ける印象から“どういう人なんだろう。きっと気さくで面白い人なんだろうな”と思っていたのですが、そのままでした。すごく優しくて、熱い人でした。
――教師役のメンディーさんに、最初に心を開く生徒の武藤役ですが、どのように関係性を築いていったのでしょう?
水沢 僕は普段、あまりコミュニケーションを取るのが得意ではないので、なかなか人に話しかけたりすることができないんです。でも、メンディーさんのほうからたくさん話しかけてくださって。おかげでどんどん打ち解けて、そのうちにお互いの話をするようになり、最後のほうは空き時間に話し込むこともしばしばでした。
僕がすごく漫画が好きなので、おすすめの漫画を紹介するとメンディーさんはそれを読んできて感想を知らせてくれるんです。メンディーさんは絵を描かれるんですが、僕は絵が苦手なので、どういう観点でどういう手法で描くんだろうと、お話を聞くこともありました。
――生徒の武藤を演じるうえで、メンディーさんの先生に影響を受けたところは?
水沢 武藤は最初は心を開いていないのですが、心が開けるようになってからは役の理解度がさらに深まりました。武藤が“大地大輔という人間に頼っていいんだ”と思える瞬間があったのは、メンディーさんのおかげだったと思います。
――ヤングケアラーの武藤に共感するところはありましたか。
水沢 これまでの役なら、自分に似ている部分を見つけることができたのですが、今回は正直に言って、かなり難しかったです。親に頼ることができず、自分ひとりで家族を支えて、学校もまともに行けないなんて想像もつきませんでした。事前資料を自分で探したりしましたが、ネットの情報には正しいもの、そうでないものがあります。
どこまで信用していいのだろうと、現場でも監督とお話しながら、撮影期間もずっと役のことを考えながら作っていきました。学生たちが盛り上がっていいんだ、というときにも盛り上がれないのが武藤なので、新鮮な感情をずっと大事にしていました。
――学園ドラマでは、落ち着いたテンションのキャラクターを演じることが多いですよね。
水沢 だいぶ落ち着いているというか(笑)。ツッコミ側のキャラクターにいる立ち回りが多いです。
――今回の武藤は次第にテンションが上がっていくキャラクターですね。
水沢 まさしくその通りです。プロレスに対しても、先生に対しても、いろんなことが起きて向き合ううちに熱くなっていく人間でした。
――普段からプロレスは見ますか。
水沢 見たことがなかったんです。それぞれのキャラクターの名前が、有名なプロレスラーさんたちから取っているんだという話は、ドラマの撮影が終わりそうな終盤辺りに聞いて、初めて“そうだったんだ”と知ったくらいです(笑)。プロレスには、今回初めて触れました。事前に資料はいただいていたのですが、映像と生で見るのとでは迫力が全然違いました。
――メンディーさんのプロレス姿を見て、実際に熱くなりましたか。
水沢 プロレスの場面はプロの方もいらしたんですが、メンディーさん、(人気レスラー役の)武智(海青)さんも本物にしか見えなくて。無料でこんなにいい試合を見せてもらっていいんだろうか、というぐらいの思いでした。僕だけでなく、他のキャストもみんな盛り上がっていたと思います。
メンディーさんに対して、みんながそれぞれに思っていること、感じていることがあって、芝居中もそれが無意識に出ている人が多くて、“みんな、いろんなことを感じながらやってるんだろうな”と思いながら、撮影していました。
――制作発表でも、メンディーさんからの手紙に涙ぐんでいましたね。
水沢 ああいうの、ダメだって言ってたんです(苦笑)。接している時間が長い分、本当に教師と生徒みたいな関係だったんです。じつは最終回の撮影で、お互い、とんでもないくらい泣いてしまったんです。こんなにも感情が動く人に出会ったことはなかったです。僕にとって初めての体験でした。
本当にもう、目が合うたびに泣いてしまうから、メイクを直しながらティッシュで押さえて撮影して……。僕はともかく、メンディーさんは本来そこまで泣かなくてよかったんです。なのに、涙が止まらなくて。お互いに役柄と素の部分が混ざり合ってしまっていたのだと思います。
優しくて誰にでも配慮して、現場でも多くの人に愛されていたメンディーさん。学園ドラマにはいくつか出演させていただいてきましたが、こんなにも先生のことを尊敬して、大好きになれる作品はありませんでした。メンディーさんに、このタイミングで出会えてよかったです。
――ドラマの放送が楽しみです。
水沢 初めてプロデューサーや監督とお会いしたときに、現代の高校生たちが直面している社会問題をテーマにしているけれど、暗すぎたり重すぎたりしたくないとお聞きしました。目を背けたくなるようなエピソードもありますが、ドラマを通じて、実際に高校生の周りで起きている現状を受け止めていただきたいですし、良くても悪くてもどんな思いでもいいですから、少しでも感じることがあったなら、この夏、チーム一丸となって作った甲斐があります。