ウクライナの首都はどこかと聞かれれば、「キエフ」と答える人も多いのではないか。キエフという発音はロシア語のため、「キーフ」というウクライナ語の発音に訂正されたという話を、どこかで読んだことのある人もいるかもしれない。

よく似た話で、かつて「グルジア」と呼ばれていた国が「ジョージア」と国名を変えた例がある。グルジアはロシア語で、2008年のロシア軍の侵攻の際に国名が変更された。ちなみに、ジョージア語でジョージアは「サカルトヴェロ」という発音で、ジョージア人以外には非常に難しい発音。そのため、対外的には英語の発音である「ジョージア」を国名としたという経緯がある。

今年5月にインタビューに答えてくれた、スヴィアトスラヴ・イヴァネンコさん(32歳)が、その後のキーフの様子について語ってくれた。

この戦争があと半年で終わるとは思ってない

「毎日サイレンが鳴り響く日が続いていますが、僕の住んでいるキーフ中心地は戦時中とは思えないほど平和な日々が続いていました。カフェやレストランなども通常通り営業しており、会社へ仕事に向かうサラリーマンも、サイレンに慣れた生活を送っていました」

事態が大きく変わったのは、10月10日。ロシアが武力で併合したクリミア半島とロシア本土を結ぶ橋が破壊され、その報復としてロシアがウクライナ全土に攻撃を仕掛けた。キーフもその例外ではなかった。

その1週間後の10月17日早朝、再びロシアはキーフを爆撃した。

「イラン製のカミカゼ・ドローンが、街の中心地で爆発している音が聞こえました。慌てて家の地下室に避難しています。かなり近くに落ちたようです。街のインフラか、政府機関を狙った攻撃だと思います。カミカゼドローンは独特な音がするもので、バイクのエンジンのような音です。こうした攻撃を空中で撃ち落とすシステムも機能していますが、月曜の早朝から非常に迷惑な話です」

〇スヴィアトスラヴ・イヴァネンコさんインタビュー

今年5月の時点で、ウクライナ軍への参加を志願したイヴァネンコさんだったが、小柄でどう見ても戦闘に向くタイプではない。戦闘要員として軍への参加は叶わなかったが、現在は補給部隊として軍へ参加するための知識を学びつつ、新しい仕事も始めている。

ITに詳しいバックグランドを持つイヴァネンコさんは、現在はサイバーセキュリティ(アタック)関連の民間企業に努めて生計を立てている。詳細を明かすことはできないが、現在のウクライナでは軍民共同でこうした分野での実用的なデータを蓄積しているという。

「この戦争があと半年で終わるなどという、甘い考えは持っていません。ですが、前線で戦うウクライナ軍の正規兵は、武器の扱い方に関する訓練も十分に受けています。これに、いわゆる“西側”と呼ばれている国から最新鋭の武器が提供されています。

日本にいる皆さんにとってはあまり知られていない事実かも知れませんが、ウクライナは2014年にロシアがクリミア半島を軍事力で併合してから、ずっと戦争状態にあります。私たちの国はそう簡単に負けるような国ではありません。」

存続の危機をかけ、国民が一丸となり戦い続ける国、ウクライナ。そう簡単に終わる戦争ではないが、いつか本当に平和な日々が訪れるだろう。

▲早く平和な日々が訪れてほしい 写真:Dmytro Bartosh / PIXTA