自由の国・アメリカ。開放的で大胆な生活に憧れを抱いている人もいるだろう。しかし、都市部の極貧地区では犯罪や麻薬などが横行しているのも事実。それは、リベラルに寄生されたアメリカ連邦政府との関わりが強いからだと、“戦う”歴史学者ことジェイソン・モーガン氏は説明します。

本来の平和で良識のあるアメリカ人たちを凶悪に塗り替えている「リベラル派」とは一体何者なのだろうか。

※本記事は、ジェイソン・モーガン:​著『リベラルに支配されたアメリカの末路 - 日本人愛国者への警告 -』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

冷戦の正体

冷戦が終わって資本主義のアメリカが勝ったというのが、アメリカでもヨーロッパでもアジアでも通説だ。

しかし、イデオロギー的にアメリカとソ連がそれほど大きく異なっていたのかと言えば、疑問だ。中央政府が絶対的な力を持って経済を計画的に推し進める構図は同じだった。

理想を言えばアメリカは共産主義から我が身を守るために日本やイギリスなどと手を組んで一緒に戦うべきだったが、1930年代からアメリカ自体がどんどん共産主義化していき、結局冷戦とは、イデオロギーの戦いとは名ばかりの、二つの大国による経済競争に過ぎなかった。

ヒトラー率いるナチス・ドイツがボルシェヴィズム(ロシア社会民主労働党左派の思想、レーニン主義)という妖怪と戦うために自らも妖怪になってしまったように、アメリカとソ連は代理戦争をやっているうちに互いに似てきてしまったのだと思う。

▲冷戦とはアメリカ・ソ連の経済競争でしかなかった イメージ:セミ / PIXTA

今になってロシアを悪に見立てることにしたアメリカのリベラル派

かつて、ソ連の脅威に怯えたのはアメリカの保守派だ。

当時はそれだけソ連の影響が各国に及んでいたのだから、警戒するのは当然だ。

しかし現在、ロシアの脅威に怯えているのはアメリカのリベラル派だ。

そんなものは蜃気楼(しんきろう)に過ぎないといくら証拠を出して説明しても、彼らは幻想とも言える「ロシアの脅威」を強く信じている。

自称「進歩的」なリベラル派は、相変わらず遅れていて、後ろ向きだ。

さながらコメディー・ショーのようにも見えてくるが、そのナンセンスの裏にはある真実が潜んでいる(リベラル派はそれに気付いていないかもしれないが)。

その真実とは共産主義勢力の構造的な変化だ。

詳しく説明しよう。

第二次世界大戦前のソ連は、モスクワのコミンテルンをコントロールする革新的な共産主義者が司令塔となって、各国で働く工作員の部下(尾崎秀実(ほつみ)やリヒャルト・ゾルゲなど)を操ることで影響力を行使してきた。脳が体中の細胞に命令を出しながら動かすような構図だったわけだ。

ところが今のアメリカでは、伝統に背く動きはだいぶ前から分化されていて、脳がなくても細胞単位で動けるようになっている。

それを示すかのように、最近のアメリカでは自分が純粋なリベラル派だと主張すると、細胞単位で動いている左翼過激派に猛アタックされてしまう。実際、リベラル派の砦といっても過言ではないニューヨーク・タイムズには、左翼過激派の暴力に怯えるリベラル派が続々と投稿している。

▲リベラル派を主張すると袋叩きにあう イメージ:MicroOne / PIXTA

もう一つ例を挙げると、エバーグリーン州立大学という小さな大学で働く古典的なリベラル派の学者であるブレット・ワインスタイン教授は、白人に対する明らかな人種差別(「白人はこの日にキャンパスに来るな」という大学からの命令があったこと)を批判しただけで、「ファシスト」と呼ばれて数日間キャンパスから追い出されてしまった。

繰り返すが、彼は古典的なリベラル派である。

でもアメリカの左翼から見れば、リベラルは右翼と同じなのだ。それだけアメリカの左翼が過激なテロ集団になっていることの証である。

ギリシャ神話では自らの子供を呑むクロノス(サタン)の姿が描かれるが、それと同じく、左翼による終わりなき革命は、自らの支持者をなんのためらいもなく呑み込む段階に来たのである。

しかし、人間が本質的に善であると信じるほとんどのリベラル派は、信頼していた左翼陣営による頻繁な裏切りや、平和を訴える暴力的な集団の姿を自分の目で見ても、現実を受け入れることができない。

そこでリベラル派は、自分の思い込みが間違っていることを認めるのではなく、諸悪の根源を無理やり見出すことにした。

その結果たどり着いた矛先が、ロシアだ。

自分の根本的な過ちを認めることができないのはいかにもリベラル派らしいとも言えるが、皮肉にも、リベラル派がずっと前から恋人扱いしてきたモスクワを犯人扱いするとは、もはや笑いたくても笑えないくらいお寒い冗談である。

それにしてもリベラル派ほど精神的に弱いものはいない。

強風が吹けばリベラル派はただ吹き飛ばされるだけで、本当の悪が目の前に現れても抵抗する根性は持ち合わせていない。

約100年前、ロシアの大地にレーニンとスターリンという人間の姿を装った悪魔が登場した。彼らは皆殺しをただ企むだけではなく、粛々と実行していったが、その時リベラル派は共産主義に対して警鐘を鳴らしていたアメリカと日本の保守派を責めるばかりだった。リベラル派は空想の世界に生きるだけで現実が存在しないため、平気で事実を捻じ曲げられるのである。

▲空想に生きるリベラルは平気で事実を捻じ曲げる イメージ:TK6 / PIXTA