ぺこぱ松陰寺太勇と練り上げた新ネタ

そして天下のオスカープロモーションの力はすさまじい。そのコンビは、あっという間にイベントの司会や深夜番組のMCに抜擢されていった。俺は愕然とした。

「嘘だろ! あそこの枠はオスカーのなかで一番結果を出してる俺が適任だろ!」

その怒りも次第に虚しく思えてきた。事務所を挙げて猛プッシュされる彼らとは対照的に、俺たちの扱いはそれ以降も変わることはなかった。

とはいえ、そこで腐っていてばかりいても始まらない。俺は2013年の4月から、毎月新ネタ3本作るライブを主催することにした。そこで生まれた良さげなネタをピン芸人タッグリーグ戦で試す、そんな日々を送った。面白いネタが思い浮かばない月もあった。自分の実力をキャパオーバーしてるんじゃないかと落ち込んだ。

ゲストは毎回2組。仲の良い芸人仲間に安いギャラで出てもらった。飛石連休、くじら、大輪教授、キャプテン渡辺、そして永遠のライバル・じゅんいちダビッドソンさん。

ゲストがネタをやってるあいだに次のネタの衣装に着替え、小道具の用意はぺこぱの2人がやってくれた。毎月の新ネタ3本ライブが終わると、心が晴れやかだった。終わったあとはゲストやぺこぱと一緒に朝まで痛飲した。

何ヶ月か経ったころ、「お前誰だよ!」をオチにしたベタなショートコントを、ツイスト踊りながらやったら面白いんじゃないかと思いついた。すぐに近所に住んでいるぺこぱ松井を呼び出す。

「お前ギターできるだろ? この音出せるか?」

「はい」

「ここはもう少し早く」

「はい」

松井と一緒に音楽アプリを使って曲を打ち込んだ。

「オチは全て『お前誰だよ』。それをこのロックンロールに乗せてやるんだ!」

「いいっすねー!」

二人で大爆笑をしながらネタを練り上げた。これは売れるネタができた、と初めて思った。長く暗いトンネルの出口が見えそうな気がした。

それから1年。練りに練ったお前だろだよロックンロールは、元旦の新春レッドカーペットで満点大笑いをとった。そしてR-1ぐらんぷり2014の予選が始まった。

(構成:キンマサタカ)

『TAIGA晩成 ~史上初! 売れてない芸人自伝~』は、次回12/9(金)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
TAIGA(たいが)
1975年生まれ。神奈川県出身。2005年『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』(フジテレビ)、2009年『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)、2009年の『あらびき団』(TBS)、2014年の『R-1』決勝進出でプチブレイク。下積み時代が続く中、2020年の『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ)、2021年の『アメトーーク!』(テレビ朝日)出演で再ブレイクの予感がする47歳。Twitter:@TAIGAtrendy