何を支えに芸人をやってきたのか・・・
思い出してみると、そもそも芸人を始めてから「人気」というものがあったことがない。ずっとない。コンビだったときもない。元相方が初めてもらったファンレターに「ファンやめます」って書かれてたことをネタにしたこともあった。
人気というのは当然、動員に直結する。エゴサして評判いいとか、そんなことはどうでもいい。要は、お金と時間を出してくれる数多くのお客様がいるかどうかだ。これこそ人気芸人の証しであり、芸人を続ける動機ともなろう。
ここまで書いていて、なんだか怖くなってきた。私は一度も人気があったことがないのに、何故ここまで芸人を続けているのだろうか? 例えば、同じ事務所で周りの芸人が引くくらい人気があったうしろシティ、華がありどこまでもポップなオジンオズボーンさん。彼らでさえ解散して、別の道に行こうとしている。
人気がいくらあっても、そのうれしい状態が続くとは限らないだろう。どんな人気芸人でさえ、だんだんとかげりが見えたりする。おそらく、この落差に耐えられなくなり不協和音をきたす。悲しいが、それは理解できる。人として、芸人としてわかる。
ライブが終わって、外に出たら、目の前に出待ちのお客さんがいる。きっと心の支えになるはずだ。ファンレターを貰えば気持ちも高ぶるだろう。もちろん、これまで全くもらったことはないとは言わない。しかし、他の芸人に比べて圧倒的に少なかった。
いったい私は、なんの支えがあって、ここまでやってこれたのだろう。全く自覚がない。寂しさを感じたこともない。おそらく、神経に麻酔を打ってお笑いをやっていたとしか考えられない。そして私は、これからもその麻酔を打つのだ。
そう。人気とかじゃない。人気なんてどうでもいい。ただただ、現場で仕事を黙々と遂行する、職人のようなモノになるのだ。私はそう自分を律した。
「お疲れさまでした! 今日はありがとうございました!」
イベンターさんがかけてくれた言葉に、私は深く礼をした。
(構成:キンマサタカ)