何を支えに芸人をやってきたのか・・・

思い出してみると、そもそも芸人を始めてから「人気」というものがあったことがない。ずっとない。コンビだったときもない。元相方が初めてもらったファンレターに「ファンやめます」って書かれてたことをネタにしたこともあった。

人気というのは当然、動員に直結する。エゴサして評判いいとか、そんなことはどうでもいい。要は、お金と時間を出してくれる数多くのお客様がいるかどうかだ。これこそ人気芸人の証しであり、芸人を続ける動機ともなろう。

ここまで書いていて、なんだか怖くなってきた。私は一度も人気があったことがないのに、何故ここまで芸人を続けているのだろうか? 例えば、同じ事務所で周りの芸人が引くくらい人気があったうしろシティ、華がありどこまでもポップなオジンオズボーンさん。彼らでさえ解散して、別の道に行こうとしている。

人気がいくらあっても、そのうれしい状態が続くとは限らないだろう。どんな人気芸人でさえ、だんだんとかげりが見えたりする。おそらく、この落差に耐えられなくなり不協和音をきたす。悲しいが、それは理解できる。人として、芸人としてわかる。

ライブが終わって、外に出たら、目の前に出待ちのお客さんがいる。きっと心の支えになるはずだ。ファンレターを貰えば気持ちも高ぶるだろう。もちろん、これまで全くもらったことはないとは言わない。しかし、他の芸人に比べて圧倒的に少なかった。

いったい私は、なんの支えがあって、ここまでやってこれたのだろう。全く自覚がない。寂しさを感じたこともない。おそらく、神経に麻酔を打ってお笑いをやっていたとしか考えられない。そして私は、これからもその麻酔を打つのだ。

そう。人気とかじゃない。人気なんてどうでもいい。ただただ、現場で仕事を黙々と遂行する、職人のようなモノになるのだ。私はそう自分を律した。

「お疲れさまでした! 今日はありがとうございました!」

イベンターさんがかけてくれた言葉に、私は深く礼をした。

(構成:キンマサタカ)

『みなみかわのないないはなし』は、次回12/13(火)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
 
みなみかわ
1982年生まれ。大阪府出身。2015年7月〜2019年1月まで「ピーマンズスタンダード」として活動。 平成25年度 漫才新人大賞決勝進出。呼吸法で痛みをなくすロシアの武術「システマ」を体得。2008年にはピンで『あらびき団』(TBS)でプチブレイク。『エンタの神様』(日本テレビ系)にも定期出演。『ゴッドタン』(テレビ東京)、『お笑い向上委員会』(フジテレビ)、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)など人気番組への出演が続き、再ブレイク。Twitter:@p_minamikawa、YouTube:みなみかわ