そば屋をめぐるミステリ

この店には最大のミステリがあります。というのも、いつも外に出ているのが『米次郎』という看板なんです。それでも店主は「うちの店名は『よりみち』だ」という。

奥で埃をかぶる『よりみち』の看板

聞けば、高瀬さんはかつて神楽坂でバーを経営していたものの、一念発起して立ち食いそばの修行に。その後、神楽坂で立ち食いそば屋『米次郎』を営んでいたそうで、当時の看板をそのまま持ってきて有効活用しているんだとか。いいじゃないですか。このゆるさ。奥で埃をかぶっている『よりみち』の看板もいい。SNSのチェックイン機能を使っても米次郎しか出てこないよ。お~い。ちなみに米次郎は高瀬さんの下の名前です。

無駄な動きが一切ありません。

(高瀬)「神楽坂でバーをやってから、立ち食い蕎麦屋に1年修行に行ったんだよ」

(私) 「どこで修行したんですか?」

(高瀬)「『吉そば』って知ってるかい?」

『吉そば』! 中目黒駅前をはじめ、都心に14店舗を展開する、中規模のチェーンじゃないですか。実は高瀬さん、『吉そば』の味が好きで修行先に選んだんだとか。『よりみち』のつゆのキモとなるかつおぶしも、そばも全て『吉そば』スタイルを完璧に受け継いでいるそう。開店した時は、吉そばの役員がお祝いに駆けつけてくれたそうです。

店は午前・息子さん、午後・高瀬さんのダブル体制。息子さんは寡黙ですが、実はこの分厚いかき揚げは息子さんの発案なんですって。中でも、げそ天は午前中に売り切れてしまう名物メニュー。だからあまり人には勧めたくないんだけどな。でもいいか。この店のげそ天食べたら、他の店のが物足りなく感じてしまうから、覚悟したほうがいいかもしれない。

げそ天狙いなら午前中に行くべし

『よりみち』は朝早くからとても賑わっています。街道沿いにあるので、仕事前の職人さんが朝ごはんを食べに寄るんです。だからオープンは朝6時。彼らはさくっと食べて車でブーンと仕事に向かいます。その様子を見ていると、立ち食いそばはファストフードなんだって改めて思うんです。

彼らは車の中で口の中に残ったかつお出汁の余韻に包まれているのかな。

さて、私も食べ終わったのでそろそろお暇しましょうかね。

食器を自分で下げて、はい、ごちそうさま。

気がつけば道路までただよう、出汁のいいにおい。

これは幸せの香りだね。

いやあ、うまかった。

さて、次はどの店にいこうかな。ふらりふらりと次の街へ。

<店舗情報>
■立喰いそば よりみち
住所:東京都目黒区南3-8-8
電話:03-3718-4981
営業時間:6:00~16:00(月~土) 定休:日・祝
営業時間・定休日は変更となる場合がありますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

『立ち飲み・マイ・ラブ♡ - 痛みに負けるな!-』は次回3/20(金)更新予定です、お楽しみに。