カズレーザーの粋な計らい

2018年の年が明け、予定日の6月まで半年となった。

この頃は、近所に住んでいたカズレーザーと週4くらいで飲みに行ってた。最初は先輩の俺が奢っていたが、メイプル超合金が売れてからはカズレーザーの奢りだった。それでも昔からの仲は変わらなかった。そんなカズが旅行土産をくれた。京都に芸人仲間と旅行に行ったらしい。

▲飲み仲間のカズレーザー

「みんなでお参りしてきたんです」

そういって安産祈願のお守りを渡される。旅先で俺の家族のことを考えてくれるのが本当にうれしかった。カズには今でも感謝している。

そして6月。

まもなく陣痛が来るかもということで、嫁の実家の近くの病院へ。病室で一緒に寝ようとしたけど全く眠れない。翌日は毎年呼んでいただいてる沼津のキャバクラ営業が入っていた。2ステージで泊まりの仕事。昔からの大事なお客さんだし、収入面から考えても休むわけにはいかない。笑顔で見送ってくれる嫁や、向こうのご両親に何度も頭を下げて、静岡に向かう。沼津のキャバクラについてからも、ずっと祈るような気持ちだった。

無事で生まれてきてくれ。妻が戦っている。だが、俺は遠く離れた地から祈ることしかできない。リハーサルを終えると、嫁のお父さんからメッセージが送られてきた。

「今、陣痛が始まりました。生まれたら連絡します」

本番前だというのに、そのメールを読んだら涙が止まらなくなった。頑張れ嫁。頑張れ息子。俺もステージで頑張るから。

だが、一部二部ともにステージを終えても、お父さんからのメールはない。キャバクラ営業はしこたま飲まされるので、二部が終わったらホテルで爆睡だった。翌朝あわててメールをチェックすると「陣痛がおさまった」と書いてある。

大丈夫だろうか。急いでホテルをチェックアウトして新幹線に飛び乗り、嫁のいる埼玉の病院へ向かう。その途中もずっと神様に祈っていた。

「どうか無事でありますように」

東京まで戻ってきたあたりで、俺のスマホが震えた。嫁のお父さんからだった。