妊娠発覚

2017年9月30日に行われた結婚式が終わり、2週間が経った。

秋が深まってきたある日、嫁が体調の異変を訴えた。もしかして、という思いがあった俺は、薬局で妊娠検査キットを買うことにした。よく知らなかったが、ものの数分で妊娠しているかどうかがわかるという。二人で検査キットを「せーの!」で裏返す。

「え? これってどっち?」

何やらさっきまでなかった線が入っているように見える。だが、俺たちはしっかりと説明書を読んでなかったので、あわてて読み返す。

線が入っていると妊娠だった。

「赤ちゃんがいる!」と大喜びする妻と、俺もついに人の親になるのか。いや、こういう市販のものは100%とは言えないと聞くし、と冷静になろうとしている自分がいた。

翌日、俺は仕事だったので、嫁が一人で産婦人科に行った。バイト中に何度もスマホを確認した記憶があるから、とにかく気になってたんだろう。

嫁からようやく送られてきたLINEには「やっぱり妊娠してた。赤ちゃんがいるみたい!」と書いてある。家に帰ると、超音波で撮影したというエコー写真を見せてもらう。

「この丸いのが赤ちゃんなんだって」

正直に言うと、なにがなんだかよくわからない。だが、それさえもかわいい。次の日からバイトの出勤日数を増やしてもらった。これまでと違ったやる気が湧いてくるのがわかった。朝から晩までぶっ通しで働いても、まったくつらいなんて思わなかった。生まれてくる我が子のために少しでも稼いでおきたい。バイトや仕事が終わって帰宅すると、毎日、嫁のお腹に話しかけた。

「パパだよ〜」

「ゆっくりでいいから頑張れよ〜」

聞こえてるかわからない相手に繰り返し話しかけた。それは自分が父親になるための時間でもあった。気がつけばだんだんお腹が大きくなっていく嫁。その頃にはお腹の中にいるのは男の子だとわかった。男でも女でもどちらでも良かったけど、男の子だったら一緒に遊べるなと思ったら、なんだかうれしかった。

「あ! お腹を蹴った!」

嫁のお腹に耳を当てしばらく聞いていると、「ドン!」と蹴る。「スゲー!」と思った。こんな狭いところで一生懸命に生きようとしてるんだ。頑張れよ、俺も頑張るから。俺たち二人だと少し不安だから、神様の力も借りたくて安産祈願にも行ったよ。