マンガにピアノでBGMをあてると?

ここからは「医療マンガ大賞」が広く認知されるためにはどうすればよいか、アイデアを出し合うアイデアソンのスタートである。4人からはそれぞれ、以下のアイデアが出た。

▲4人がアイデアを出し合うマラソン、まさにアイデアソンだ!

「審査会をよりオープンに!」というアイデアを出したのは、こしのである。

こしの 「審査会のときは、マンガ家と医療関係者によって意見が全然違う、みたいな現象が起こっていて。これって、わりと楽しいことなんじゃないかなって感じてたんですね。通常、漫画賞と言われてるものは、だいたいマンガ編集者の方、またはマンガ家がだいたい決めちゃう。要は、売れるマンガみたいな感じでものを選ぶんです。ただ、せっかく違う形の漫画賞なんだから、審査会をもっと一般の方に委ねてもいいんじゃないかなって感じました。

今は医療者とマンガ家・マンガ編集者でやってるんですけど、例えば一般の方で『審査したい!』という人に手を挙げてもらうとか、そういう参加の仕方もあるんじゃないかなと。マンガが描けなくても。自分で『このマンガがいい!』という作品に1票入れるシステムができるといいなあと思っていて。それは、SNSで『これがいい!』みたいなやつじゃなく、ZOOMとかオンラインとかでいいので、いろんなところで集まって何十個も審査会があると、もっと広がってくんじゃないかなと考えました」

まなまる 「やっぱり、選ばれたものを私たちは見るじゃないですか。ただ、どういう過程で選ばれたのかわからないから、“はてな?”と思ってしまうときは、そういうものがあれば見たりとか」

こしののアイデアでイベントが盛り上がっているなか、特別ゲストが登場! 近畿大学医学部・大塚篤司教授も、オンラインでセッションに参加してくれたのだ。第1回医療マンガ大賞に大塚は審査員として参加していたそう。彼は、どんなアイデアを出すのか?

▲近畿大学から、第1回の審査員でもあった大塚篤司教授が特別参加

大塚 「今の医療マンガ大賞は、漫画を描いている方が参加するところに限定されているので、例えば小学生を対象に1枚、医療とか医者について描いてもらう。それを医療マンガ大賞の子ども版みたいな形にして、入選作品は市役所に貼り付けてもらうとかですね。絵って子どもにも描けますよね? で、そのお母さんたちも興味を持ってくれると思うので。審査員の先生たちはさらに仕事が増えて大変だと思いますけど(笑)。ぜひ展示してあげて、子どもたちにも普及できたらいいな……というのが僕のアイデアです」

山本 「たしかに、もっとたくさんの方に参加していただくためには、そういった絵ですよね。マンガがすごく得意じゃなくても、いろんな方が参加できて興味を持てるようになるって、すごく大事だと思うし。お子様が描かれるというので、そのお父さんやお母さん方も実はそれに一緒に参加して、医療について気づかないうちに学んでるっていう」

続いてのアイデアは、まなまるが出した「音楽の力を借りる!」。

まなまる 「マンガは読む媒体なのでBGMがないんですけど、YouTubeでは最近、マンガを流す動画もあって。で、ドラマとか映画はBGMがめっちゃ大事なんです。こういう画面に音楽が流れてきたとき、予想以上にグッとくるというか。音楽のあるなしで、その物語への没入感が変わってくると私は思っていて。

で、今日は医療マンガ大賞で受賞されたマンガがあるので、登壇者の方に大賞作のセリフを読んでもらって、ここに音楽をあててみるとかなり物語性が出てくるんじゃないかと」

つまり、医療マンガ大賞の受賞作のセリフを登壇者が読み、そのバックでまなまるがBGMとなるピアノ曲を即興で演奏する……という試みだ。今回、読み上げられるのは、第4回医療マンガ大賞で大賞を受賞した、うめだまりこ作『看取りが近づいた時に』である。セリフを読み上げるのは、こしのとかげの2人だった。

『看取りが近づいた時に』の、母の死期を感じさせる重い場面
▲こしの&かげがセリフを読み上げ、まなまるが場面に合わせたBGMを奏でる

これが、面白いのだ。家族の朗らかなやり取りを描く場面では、耳にすんなり入ってくる明るい曲調のBGMが奏でられたし、母の死期を感じさせる重い場面では、低い音階のBGMが演奏された。結果、聴覚からの情報が加味されて、訴えかけてくるドラマ性は爆上がりに!

こしの 「これを1回見ちゃうと、音楽なしだと物足りなくなりますね。マンガ家がこういうことを言っちゃっていいのかという(苦笑)」

さらに、まなまるは医療マンガ大賞のテーマソングも制作してくれるそう。今回のイベントは横浜市のYouTubeチャンネルで3月に動画として発信され、そこでまなまる作のテーマソングは発表されるらしい、どんな曲になるのか期待したい。

医療の情報発信は炎上しやすい!?

終盤、4人のトーク中に興味深い話題が飛び出した。医療の情報発信をするなかで起こりやすい“炎上”についてである。

山本 「かげさんもTwitterでイラストが拡散されて、バズってすごいですよね」

かげ 「ただ、医療系って炎上しやすかったり、特定もしやすいです。私の発信するイラストは、患者さんとの関わりが主なので、患者さんのことを発信して、その患者さんに“自分かも……”と思われたら、それは不安や不信につながります。だから、必ず一晩以上寝かせ、かつ、自分が発信する情報が正しいかを確実な文献・論文で調べて『よし、大丈夫!』と確認してから発信しています」

山本 「医療に関する情報は、人の健康に直接関わりますからね。間違ってるときに与える影響って大きいですよね」

というわけで「医療マンガ大賞 総会」はこれにて終了! 最後は、ゆずの『栄光の架橋』をまなまるがピアノで演奏し、きっちり締めてくれた。ゆずは、横浜市伊勢佐木町でストリートミュージシャンとして音楽活動を始動させた2人である。