2019年に立ち上がった「医療マンガ大賞」は意義深い。同じ出来事でも患者や家族、医療従事者など立場によって受け取り方や感じ方が異なることに着目し、それぞれの視点で描かれたマンガを読むことで、お互いが気づき合うことを目的にした横浜市主催のマンガアワードだ。

これまでに「転院/退院」「コロナ禍でのある施設」「歯科受診のタイミング」「人生の最終段階」といったテーマで広く作品を募り、数々の受賞作を世に送り届けてきている。今年度で4回目を迎えた同賞。これまでの取り組みを振り返りつつ、今後、どのように啓蒙活動を行っていけばいいかを考えるイベント「医療マンガ大賞 総会」が、2月4日に横浜市役所で開催された。

登壇者は、以下の4人だ。

  • 司会/山本健人(SNS医療のカタチ/医師)
 

医療マンガ大賞 審査員。「外科医けいゆう」のペンネームで、SNSで積極的に情報発信し、Twitterフォロワー数は約10万人を超える。

  • こしのりょう(マンガ家)
 

医療マンガ大賞 審査員。『Ns’あおい』(講談社)、『町医者ジャンボ!!』(講談社)はテレビドラマ化。現在、週刊誌や看護系webにて連載中。

  • 看護師のかげ(看護師・イラストレーター)
 

医療マンガ大賞 応援サポーター。新人ナースや看護学生に役立つ情報を、書籍や看護系雑誌等にて、イラストでわかりやすく発信中。急性期病棟で勤務する現役の看護師でもある。

  • 永藤まな(まなまる)(ピアノタレント)
 

Youtube フォロワー約60万人。2019年より『南伊豆町』観光アンバサダーに就任。国民的キャラクターの歌モノマネが各SNSで反響を呼び、注目を浴びる。現在、『THE TIME,』(TBS系)にレギュラー出演中。

 “医療”と“マンガ”それぞれのプロが審査する

最初に、司会の山本から今回のイベントの趣旨説明があった。

山本 「この医療マンガ大賞は、横浜市が主催になって行われている、行政主体のすばらしい取り組みで、僕は4年前からずっと応援して協力させていただいています。この企画をもっと多くの方に知っていただき、より良いものにしたいというところで、いろいろな方々をお招きしてアイデアを募ろうと。いわゆる、アイデアソン(参加者がアイデアを出し合う)をやろうという趣旨で、今回のイベントは行われます」

というわけで、登壇者全員が舞台に登場! ここでいきなり、まなまるがピアノ演奏を披露してくれた。

▲『ドクターX』の曲を奏でるまなまる。

彼女が何を弾いたかというと、ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)の曲である。

まなまる 「医療関係だから“そういえば、医療の曲がいいのかなと”と思って。山本先生が『絶対、ドクターXがいいよ』とおっしゃったので、弾かせていただきました」

さあ、いよいよトークセッションの始まり。まずは、今年度で4回目を迎えた医療マンガ大賞の意義を振り返るようだ。

▲横浜市役所の中とは思えないロケーションだ

なんと、第4回までの累積応募数が262作品ものマンガ作品が寄せられた医療マンガ大賞。これらの作品を審査するのは、そうそうたる顔ぶれだ。山本とこしのを筆頭に、横浜市副市長、マンガ『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』の編集者である佐渡島庸平、『ちはやふる』作者の末次由紀といった面々が、しっかり目を通したというのだ。

▲コロナで集まるのが難しいためZOOMで集まって作品について議論した

こしの 「審査は大変ですね。揉めますね(笑)」

山本 「むちゃくちゃ、揉めるんですよね。大変なんですよ。とにかく、真剣に審査してますよっていう話で。審査会も3~4時間ぐらいかかるんですよね(笑)」

こしの 「かかりましたね。3時間くらいはずーっと喋ってますもんね(笑)。マンガ的に面白い作品と、医療的に面白い作品のせめぎ合いじゃないですけど(笑)」

山本 「こしの先生はマンガのプロなんでね。他にもマンガ編集の方などマンガのプロの方がいて、医療の専門家と混じってるんです。医療の専門家は、どうしても“医療の情報を伝えたい”“啓発したい”という前のめりな思いがあるから『これを読んで役に立つかどうか』という視点で評価したいんです。だけど、マンガの専門家は『マンガとして面白いか』『マンガとして完成度が高いか』で評価がしたい」

こしの 「そうですね。ついつい、読みやすさとか、絵が可愛いかとか言っちゃいますんで(笑)。議論が白熱してなかなか結論が出ないので、最終的には多数決になってしまうこともあります」

山本 「だから毎回、僅差なんですよ。僅差で受賞を逃した作品がたくさんあるので、もう全ての方にチャンスがあります。次(第5回)もあったら、ぜひ応募してほしいと思いますよね」

入賞作品は、医療マンガ大賞のホームページで読むことができる。

▲第4回医療マンガ大賞・大賞作品『看取りが近づいた時に』(患者家族視点/うめだまりこ)

山本 「読めるのは当然として、すごいのは右上に『もっと詳しく知るには?』ってあるんです。これを押すと、医療の詳しい情報を知ることができるリンクに飛ぶんです。ここから行政のサイトへ行ったり、医療機関のサイトに行けるという。つまりこれ、マンガが入り口になってるんです。入口の敷居は低いんだけど、もっと詳しく知りたい人は、ちゃんと詳細な情報までたどり着けるんです。ここで『歯科受診のタイミング』とかを学べるようになってるんですよね」

そもそも「医療マンガ大賞」が立ち上がったきっかけは、マンガが持つ発信力を活用しようと考えたからであった。

山本 「本の難しいところはテキスト情報なので、本好きの人にしか情報が伝わらないんですね。本が好きな人って、必ずしもそんなに多くない。それに比べると、マンガはもっともっと広く伝わるんですよね」

こしの 「マンガにすることで入り口が入りやすくなるし、読むことによって“こういうこともあるね”と感じてもらうには、マンガはすごくいいと思います」

山本 「ですよね。普段からマンガを使って知識を得ておくと、何かあったときに“あれ、マンガで読んだな”と思い出すみたいな」