20〜23歳の疾走 feat. 横浜ギャルズ
フレンチボーイと別れを告げ、20歳で日本へ帰国した私。
海外に行っていた間は、ほぼ誰とも連絡を取っていなかったので、帰ってきたら友達がいない状態でした。
そこで新たに出会ったのが、神奈川でやんちゃをしていたチーちゃんを中心とする横浜ギャルズ。もちろん、ゆきよの紹介。
カンヌに現れたジェームズ・ボンド
みんなヒップホップが好きだったから、私の家に集合して六本木や渋谷のクラブに繰り出してもいたけど、一番の思い出はそのメンバーで行く海外旅行。
横浜のギャルズはガソリンスタンドや関内のキャバクラでアルバイトをしていて、みんな可愛いからどんどん人気になって貯金が溜まっていく。私も父の会社でアルバイトしながら旅費を貯めて、2ヶ月に1度くらいのペースで海外へ。
それまで留学という形で海外へ行っていたけど、自分で働いたお金で行く友達との海外旅行は、これまでとぜんぜん違う、自分たちでサバイブする楽しさがありました。
その中で、印象に残っているのはフランスのカンヌ。
アルバイトで貯めた旅の予算は、3人合わせて約100万円。贅沢しなければ何とかやりくりできるはず。だけど、私たちがチョイスしたのは、超有名な五つ星ホテル・マルティネス。ハイシーズンは1泊80万円だったかな。
マルティネスは、一般の宿泊者向けのビーチとVIP専用のビーチがあって、VIP専用には桟橋の上にビーチベッドもあって、美味しいシャンパン(私はお酒飲まないけどね)もフルーツも用意してある。
どうせ行くなら最高の体験をしたい。それが私たちのやり方!
とはいえ、用意していた旅費はホテルのデポジットで全額支払っていたため、所持金はほぼ無し……。ホテルに到着して部屋に入った瞬間、「さて、ここからどうしよう」とサバイブが始まるわけです。
ですが「どうにかなるっしょ!」っていうのもまた、私たちのやり方。
その晩、レストランに向かった私たちは、節約するために3人で一つのパスタをシェア。どうやって宿泊費を工面しようかと話していると、頭上の空に「スヌープ・ドッグが今晩カンヌでライブを決行!」という告知が書かれた飛行船が。
ヒップホップが好きな私たちは、もちろん行きたい。
でも、そんなお金は無い…。
一皿のパスタを食べ終わる頃、レストランの中に異彩を放つテーブルが。
一人は白いスーツでオールバックのイケメン、ほぼジェームズ・ボンドのような紳士。もう一人は、グレース・ジョーンズみたいな超かっこいい女性。圧倒的オシャレ! という人たちです。
私たち3人は「何をやってる人なのかな?」とか、その人たちの話題に。そうこうしていると、そのジェームズ・ボンドが話しかけてきたのです。
「失礼。君たちはあのライブに行きたいの?」
「行きたいけどお金がない。一つのパスタをシェアしている私たちが行けると思う」「そうか。ちなみに、どこのホテルに泊まっているの?」
「マルティネスだよ。でもデポジットだけで全財産を使っちゃったの。もし宿泊費が払えなかったら捕まっちゃうのかな?(笑)」
「どうかな(笑)。まぁ、ライブが行われる会場はこのレストランの近くだから、行くだけ行ってみれば?」
なんで私たちに話しかけてきたのかな?
とにかく、パスタを食べ終えた私たちは、今後の作戦を練るためにホテルに帰ろうと席を立つも、なぜかパスタの代金は払わなくていいということに。
ん??
と不思議に思ったけれど、その直後「ご飯代が浮いたから、そのお金でスヌープ・ドッグのライブに行けるじゃん!」となったのです。