ギリシャのクレタ島でリアルホラー映画!?

女の子だけの海外旅行って、少し危険なイメージがありますよね。でも、英語とフランス語が少し話せたせいか、それまであまり危ない思いはしてことはなかったんです。

ただ、クレタ島での出来事は今でも忘れられません。

クレタ島はギリシャのエーゲ海にある島で、島人はクレタ人であることに誇りを持っています。英語は通じなくて、観光客はほぼいない場所です。

私と横浜ギャルの2人で訪れたその日、行きたいレストランがあったので、あらかじめホテルの人に住所を伝えてタクシーを呼んでもらいました。いざタクシーに乗ると運転手さんから「行き先の住所は?」と聞かれ、あらためて説明をしました。

タクシーが動き始めてしばらくすると、一般道から高速道路に。レストランはホテルからそう遠くない街中にあるはず。なのに、キラキラしていた街並みがどんどん遠くなっていくのがわかります。

小さい島なのに、20分経ってもどこにも到着しない…。
隣に座っていた友達も何かを察しました。

「BABI、絶対に表情を変えたり、大声出さないでね」
「わかったけど…」
「このタクシー、料金メーターがないんだよね」
「本当だ。てか、これ誰の車??」
「わかんない…」

とりあえずパニックにならないように、窓を開けて新鮮な空気を吸おうとしたけど窓が開かない。脳裏に浮かぶのはネガティブなことばかり。

ああ、もうこのまま終わりだ。
お父さん、お母さん、さようなら……。

いやいや、そうじゃなくて運転手さんは単純に行き先を間違えているだけだ、と信じ、簡単な英語で話しかけることに。

「あの、すみません」
「どうしました?」
「この車って、私たちが行きたいレストランに向かっていません、よね?」
「そうだよ。今気づいた?」

サイコ……?? じゃん。

とにかく2人でどうにかして、車から降りるしかない。でも、ドアを開けて足から着地したら骨折して逃げられなくなる可能性がある。だから、腕から落ちるように飛び出そう。まずはバレないようにヒールを脱ぐ。次のカーブでドアを開けて外に出よう。

そんな会話を瞬時にして……。

次の瞬間、バーーーーーンとドアを開けて飛び出した2人。
運転手はもちろん驚いて急ブレーキ。

立ち止まっている暇はないから、道路脇の森の中へ猛ダッシュ!
追いかけてくる運転手、必死で逃げる私たち。
匍匐前進なんてやったことなかったけど、鬼気迫れば練習無しでやれるもの。
大きな木の後ろで息を潜める私たち。
懐中電灯で探す運転手。

「死ぬのは今日じゃない。絶対に生きる」

そう思い、再び木の影から再びダッシュ! そして遂に、あの運転手を振り切って森の出口へ。足は血まみれ、体は泥まみれ。おそらく、1時間くらいその場所に座り込んでいたと思う。

画 : BABI

ここからどうする? と、そこに小さな自動車が。

「ヘルプ・ミー!!!!!!」

異変に気づいたその車から一人の女性が私たちに駆け寄ります。車内には小さな子供と赤ちゃんの姿も。

「あなたたち、どうしたの!」
「乗ったタクシーがタクシーじゃなくて▲@&×××?#!!」
「わかった、安心して。この島の人は外国人に慣れていなくて、女の人は軽く見られるのよ」

その女性に助けられた私たちは、宿泊していたホテルまで送ってもらえることに。その移動中、後部座席でうなだれる私と友達の間には、小さな赤ちゃんが何事もなかったように微笑み、その顔を見て生きている実感を少しずつ取り戻していくのでした。

ただ、想像もしていなかったことが起こったせいで、私たちは完全に必殺勘ぐりモードが発動!

「この状況って、映画でいえば、助けてくれたこの女性の旦那が、実はさっきのタクシー運転手で…」
「ってことは、ここからまたあの男のところに連れて行かれる…」
「だとしら、全所持金の500ユーロをこの人に渡そうよ」
「だね。そしたら見逃してくれるかも」

と話した私たちは、すぐに彼女に500ユーロを差し出すと
「お金なんかいらない! それより無事でよかったわ」という。

無事にホテルへ送り届けてくれた彼女。お金はいらないと言われたけれど、本当に本当に嬉しかったから、彼女の車が動き出した瞬間に窓から丸めた500ユーロを投げ込んだのでした。

疑ってしまって、ホントにごめんなさい……。

そしてホテルへ戻った私たち。靴は履いてない、泥だらけ、足は血まみれ。
もちろん、ホテルのスタッフもめちゃくちゃ驚いていたので、翌日、警察に来てもらうことに。これ、事件だもんね。

でも、翌日か…。

もともと翌日は、エーゲ海に浮かぶ美しい島・ミコノス島に行く予定を立てていました。でも、こんなことがあったのなら、しっかり事情を説明して対処してもらうしかない。仕方ないよね…。

しかし、警察が来たら事情聴取とかあって、けっこう時間かかりそう…。
やっぱ、めんどくせーーーー!!!

「あの、警察は呼ばなくていいっす」

ホテルの人も「えっ??」って顔をしていたけど、私たちに立ち止まっている時間はないからね!

とにかく、私たちの旅はノープランで、行き当たりばったり。でも、なぜかミラクルの連続! そんな感じで、20歳〜23歳の頃は、チーちゃんを中心に横浜の友達とずっと遊びまくって本当に楽しかった。

みんなからも「この3年間、マジでありがとう」と言われ、その後、それぞれ海外で仕事をしている人もいれば、国内でバリバリと活躍していたりする。みんなと同じように、あの3年間の経験が私の自信にもつながっている。

みんながそれぞれの道を歩み出したように、私もそれまで遊び感覚でやっていた写真や絵を書くことに、ちゃんと向き合ってみようと思ったから。そう決意したくらい、誰にも負けない遊び方をしていたと思う。

あの3年間、一生分遊んだよ。


プロフィール
 
BABI(ばび)
1991年9月13日生まれ。絵描き。東京FMリリー・フランキー『スナック ラジオ』に出演。
Instagram : babi_0913 Twitter : @babiart0913